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「箱根はウチに向いている」青学大の“超・高速駅伝”は史上最強なのか? 原監督采配ズバリの区間配置の真相《独走で総合優勝》 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byAJPS/PICSPORT

posted2022/01/03 20:25

「箱根はウチに向いている」青学大の“超・高速駅伝”は史上最強なのか? 原監督采配ズバリの区間配置の真相《独走で総合優勝》<Number Web> photograph by AJPS/PICSPORT

青学大9区・中村からトップでタスキを受けた10区・中倉。圧勝を象徴する“区間新リレー”だった

 これだけの強さを見せつけられると、今季の青学大には駅伝三冠を達成するチャンスがあったのではないか? と思ってしまう。「箱根だけは違うレースなのかと思います」と、チームを陰で支えた野川寛太主務は話す。

「出雲は6人、それに区間が短いので、長い距離に強く、選手層が厚いという青学の特性を出しづらいんです。実際、(イェゴン・)ヴィンセント君と丹所(健)君がいる東京国際大が、ふたりのスピードを存分に生かして優勝した感じでした。出雲は東京国際さんがベストのレースをしたので仕方がない面もあったと思いますが、距離が延び、8区間ある全日本は勝てるレースだったとは思います。

 ただ、箱根だけは違います。10区間、ハーフマラソンの距離をつないでいく箱根こそが、ウチに向いているレースだと実感しました」

 この話を聞くと、学生三大駅伝が細分化してきたことが分かる。

 能力が高く、上位層のスピードが生きる出雲。競馬で例えるならば、マイルレースだろうか。

 距離が延び、8人でつなぐ全日本は、駒大の田澤廉(3年)のようなエースを必要としながらも、チームとしてスピードとスタミナのバランスを整える必要がある。競馬ならば、2000mから2400mのイメージ。ただし、1600mを得意とするマイラーでも、なんとか手が届く。

 箱根は違う。

 チームとして3000mの菊花賞、3200mの天皇賞・春で勝負できる分厚さが必要となってくる。

 東洋大の酒井監督が言うように、復路を走る5人が、1キロを2分50秒で押せる選手を揃えた学校は今までになかった。原監督はいう。

「箱根だけは、譲れませんから」

 この指揮官の意地が導火線となって、2022年の青山学院大は「超・高速駅伝」を実現し、勝負のフィールドを次のレベルに引き上げてしまった。

 このチームは、史上最強なのではないか?

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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