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《箱根駅伝・往路優勝》レース前の憶測「青学大の3区は交代するのでは…」なぜ原晋監督は“2人の1年生”をサプライズ起用できたのか?
posted2022/01/02 19:45
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Nanae Suzuki
まさか、1年生がここまで走るとは!
青山学院大、往路優勝の立役者は1年生だった。3区の太田蒼生(福岡・大牟田)、5区の若林宏樹(京都・洛南)のふたりだ。
太田は3区でライバルの駒大を置き去りにして先頭に立ち、4区で主将の飯田貴之(4年)を挟んで、5区の若林は上りに入ってから淡々とピッチを刻み、2位の帝京大には2分37秒差、3位の駒大には3分28秒の大差をつけて芦ノ湖のフィニッシュ地点に到着した。
このタイム差は、総合優勝に向けて限りなく「安全圏」に近い。
「青学の3区は交代するのでは?」
3区の太田は、12月29日の区間エントリーが発表された時点で、「青学の3区は交代するのでは?」という憶測が流れた。
なぜなら、太田はこれまでの出雲、全日本での出走がなく、1年生でいきなり3区という重要区間はないだろう――ライバル校の監督たちでさえ、そう考えたはずだ。
ところが――。
太田は強かった。
先頭の駒大から1分3秒差の2位でタスキを受けると、前半では東京国際大のダブルエースのひとり、丹所健(3年/神奈川・湘南工大附)に追いつかれたものの、丹所から離れない。それどころか、丹所を利用しながらついていったのだ(このあたり、青学大の日ごろの練習のレベルの高さがうかがえた)。
しびれたのは、残り約3キロ地点で太田が仕掛け、丹所を引き離した瞬間だ。太田はこう振り返る。