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フジテレビ三宅正治アナが語り尽くす“春高バレー”の魅力「メグカナの出現は奇跡」「実況の言葉は99%の準備から生まれる」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2022/01/04 11:02
バレーボールを初めて実況したのは1995年の春高予選から。V6がデビューした同年のW杯でも実況を任された
――大会に向け、アナウンサーの方々はどのような準備をするのでしょうか?
三宅 出場校が提出するアンケートを参考にするだけでも実況をすることはできるかもしれませんが、それだけでは“深み”は生まれません。それぞれのチームが何を考え、選手たちはどんな思いで戦っているのかを把握するために、事前に練習へ足を運び、実際に先生や高校生たちと話をする。パーソナルデータを少しでもいいから頭に入れて、「このチームのポイントはここだ」というところを見つけて実況に臨むのがベストです。
当然ながら、どれだけ万全な準備をしてもどの高校が勝ち上がってくるかわかりません。事前準備を活かせず焦ることもありますが、それは「負けたら終わり」という学生スポーツの儚さでもあり、私はそれがすごく好きで。勝った選手、チームが主人公ではあるけれども、一方では負けた選手やチームも主人公。戦って、戦って、この大会のために苦労して練習してきて、高め合って臨んできたけれど届かなかった。だからこそ流せる悔し涙は本当に美しい。実況をすること自体もすごく楽しいのですが、選手たちが涙を流せる理由がどこかにあるか、それを理解するためにアナウンサーも取材をしなくてはいけません。
後輩のアナウンサーたちに言い続けていることですが、選手たちがどんな思いでボールを打ったのか、それがわからない実況では薄っぺらいものになってしまう。その奥までわかっているからこそ、視聴者に前のめりになってもらえると私は思っています。
私たちの仕事を100%で考えた時、2時間の実況は1%、残りの99%は取材です。実況席に座ったときにはもうアナウンサーの仕事はほとんどが終わっているんです。引き出した言葉や思いなど、頭の中にいっぱい入っているものがどうやって口をついて出てくるか。言葉は99%の準備から生まれるものであるからこそ、少しでも彼女たち、彼らから聞き出し、感じようとする。それがスポーツ実況のすべてだと思いますね。
自分でアポイントを取って現場に
――99%の準備……意外に思う人も多いかもしれません。
三宅 現在の春高バレーは1月開催なので、年明けには各校が東京へ集まって練習が始まります。アナウンサーたちは自分でアポイントを取って現場へ足を運び、コツコツと自分なりの形でまとめます。
その資料は最終的に、準決勝や決勝で話すアナウンサーの手に渡ります。だから、最初につくる資料はものすごく大事なんですよ。そのベースにどんどん情報が加わって、完成され、決勝では多くのアナウンサーが関わった資料が手元に集まってくる。実況陣みんなの思いを背負って、というと大げさかもしれないですが(笑)、そのぐらい事前取材は大事なんです。
番組の打ち合わせにしても、「このチームの中心はこの選手」「チームのポイントはこれ」「ここを中心に撮って下さい」と主導するのは実はアナウンサー。中継をチームで作り上げる、そのための時間を惜しんではいけない。だから、多くのアナウンサーにとっても、春高は特別に熱が入ります。