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フジテレビ三宅正治アナが語り尽くす“春高バレー”の魅力「メグカナの出現は奇跡」「実況の言葉は99%の準備から生まれる」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2022/01/04 11:02
バレーボールを初めて実況したのは1995年の春高予選から。V6がデビューした同年のW杯でも実況を任された
――数えきれないほどの試合やチーム、大会を実況されてきた中で、特に印象深いシーンはありますか?
三宅 やはり2002年大会のメグカナ(栗原恵、大山加奈)ですね。長いバレーボールの歴史を見ても、あの2人の存在、出現は奇跡だと思います。同じ時期に、同い年で、共に187cmの選手が突然、現れたわけです。2人は翌03年W杯で大活躍して“メグカナ旋風”を巻き起こしますが、その前年は春高バレーの全国大会決勝で戦っていたわけです。放送席でもワクワク感しかなかったですね。
実況では当然、メグとカナを中心としたストーリーになります。ただ、ここでもやはり彼女たち“だけ”ではダメなんです。どれほど素晴らしいエースがいても、簡単に勝てるわけではない。成徳(現・下北沢成徳)には(荒木)絵里香もいたし(大山)未希もいた。対する三田尻(女子/現・誠英)はメグがエースとして引っ張る。春高バレーを代表する2人の主人公を擁するチームが総力を結集させて頂点で戦う。改めて振り返ってもたまらないシチュエーションですね。
――ただ、実況者としては冷静に試合を伝えなければいけない。感情が入りすぎてしまうことはありませんでしたか?
三宅 スポーツ中継のアナウンサーは、「俯瞰で見て全体的にその現象をとらえて話しなさい」と言われてきました。でも、私の場合は少し違いました。そのコートにいたい、とのめり込んでしまうタイプなんです。選手と同じようにボールを拾いたいし、同じようにジャンプしてボールを打っていたい。だから「おー、拾った!」と言葉になる。よく「叫びすぎじゃない?」と言われたのはそのせいです。メグカナの試合もずっと叫んでいたと思います(笑)
今でも覚えているのが、打ったスパイクのボールがネットに当たって、越えるのか、どちらのコートに落ちるのか、というようなシーン。「今、思いがネットを越えた」というような言葉で表現したと思いますが、ああいった場面は忘れられません。最終的に打つのは1人なのですが、その1人に打たせるためにみんなが必死にボールをつないで、そして託されたメグやカナが打つ。成徳はうまく散らしていましたが、メグはほとんど1人で打っていましたよね。今、思い返してもすごい試合だったと改めて思います。
後の木村沙織の出現にも驚かされ、狩野舞子の取材にもよく行ったりと、いろいろな思い出がありますが、やはりメグカナ対決は私の中でも特別な時間だったと思います。