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「おっきいだけって言われたくない」身長210cm牧大晃(高松工芸・3年)を変えた、高橋藍ら先輩たちの優しい言葉《春高バレー》
posted2022/01/04 11:03
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Naoki Nishimura/AFLO SPORT
堂々としているなあ。
昨年11月に行われた香川県の春高予選決勝で、久しぶりに牧大晃(高松工芸高校・3年)の試合を見て思った。身長210センチのアウトサイドは、順調に進化を遂げていた。
日本の代表選手の最長身は1992年バルセロナ五輪に出場したミドルブロッカー、大竹秀之さんの208センチ。牧はすでにその身長を超えている。大型選手はミドルブロッカーやオポジットで起用されることが多いが、牧はアウトサイドとしてサーブレシーブもこなす。世界を見ても210センチのアウトサイドはなかなかいない。昨年1月の春高バレーでは、高さを活かしたスパイク、ブロックはもちろん、大型選手のイメージを覆す柔らかな身のこなしや、器用さが衝撃を与えた。
それから約10カ月。11月20日の春高予選決勝は、試合の立ち上がりに坂出工高のブロックや好守備に阻まれ、機動力のあるコンビに翻弄されて第1セットを失ったが、主将でエースの牧は慌てなかった。
「緊張してないやろ、と思ってたんですけど、始まってみたらガチガチで(苦笑)。空回りしました。でも坂出工業は身長は大きくないので、落ち着いてやればスパイクが決まるのかなと考えて、気持ちを切り替えました」
第2セットの出だし、牧はいきなりスパイク、ブロックで4連続得点を挙げ、流れを一気にたぐり寄せた。身長210センチ、体重106キロの牧が放つ重いスパイクやサーブを、坂出工高の選手たちも体を張ってよく拾ったが、牧は要所でギアを上げるとレシーバーを吹っ飛ばし、1人で41得点を奪って逆転勝利に導いた。
高校入学以来、地道に取り組んできたトレーニングが実り、以前よりもボールに力が乗るようになった。苦手だったライトからのスパイクにも重点的に取り組み、その決定力が上がったことでチームもうまく回るようになった。
この1年間で変化したこと
何より目を見張ったのは試合後の振る舞いだ。後輩たちの頭をポンポンと叩いてねぎらい、「ダウンしよう」と全員に指示を送る。2年生の頃は、少し背中を丸めて先輩たちの後ろに隠れるようにして(到底隠れはしないのだが)整列していたが、今回は列の一番端で、背筋をしゃんと伸ばしていた。
牧自身も、この1年での変化をこう語る。
「プレーもそうなんですけど、一番変わったのは、チームメイトに意見を言ったり、指示を出したりするようになったことかなと思います。去年までは先輩の言うことを聞いているだけで、自分で考えることがあまりなかったんですけど、リーダーシップというのがちょっと出てきたのかなって」
きっかけは、昨年8月に日本代表合宿に参加したことだった。