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鹿島の監督に就任したスイス人指揮官レネ・ヴァイラーってどんな人? 「ペップのようだ」と評されるその指導哲学とは 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2021/12/27 17:03

鹿島の監督に就任したスイス人指揮官レネ・ヴァイラーってどんな人? 「ペップのようだ」と評されるその指導哲学とは<Number Web> photograph by Getty Images

鹿島初のスイス人監督として招かれたレネ・ヴァイラーは、いったいどういう指導者なのか。現地で聞こえてきた本当の評価とは?

 多言語、多文化圏のスイスの指導者であるヴァイラーは、それくらい丁寧に考え、配慮を怠らない指導者なのだ。

 実際、ヴァイラーはどのようなチーム作りをするのだろうか。

控え選手にはなかなかチャンスを与えない

 飯野経由でスイスのサッカー関係者に話を伺うと「ヴァイラーは戦術的にとても優れた監督」「とても賢い監督。ペップ・グアルディオラのよう」という声を拾うことができた。一方でスイスメディアには「非常に厳格な側面も持つ」と指摘されている。チームの輪を乱す人間やサッカー的にチームにそぐわない選手に対しては、過去のキャリアや名声に関係なく即座に失格の烙印を押すのだそうだ。

 この点に関しては、ニュルンベルク時代にヴァイラーの下でプレーしていた元チェコ代表ヤン・ポラークの指摘が興味深い。

「ヴァイラーは優れた監督だった。チームの力を、本当にすべて引き出すことができる。選手をモチベートするのがうまいし、どんな対戦相手にも適したマッチプランを準備する。だから、ディシプリンが極めて大切なんだ。ヴァイラーの求めることが理解できないとか、問題がある場合は、すぐにベンチに下げられる。僕も何度かベンチに下げられたよ。でもそれによってチームに安定感がもたらされた。ただ、当時は主力ばかりを起用して、控え選手にはなかなかチャンスが与えられなかった。そこは変わっていないかもしれないから、覚悟した方がいいかな、とは思う」

 そうした改善点については、ヴァイラー自身も自覚しているようだ。

選手にはピッチ内外での責任感と自立を要求

 指導者として様々な経験を重ねることで、自身の哲学に確かな自信を持ちながら、より柔軟にチームと向き合おうとしている。スイス紙に次のように答えている。

「選手にはピッチ内外での責任感と自立を要求する。そのためには、チームとして互いに助け合うことが大切だ。選手たちが自分の意見を口にできるよう声をかけている。結果、選手の考えを知ることができるし、彼らが責任感を持ってプレーすることにもつながる。私には“一緒に考えてくれる選手”が必要なんだ。

 練習で、何度も、長時間中断するようなことはしたくはない。インテンシティと流れは重要なプロセスだから選手のためにアドバイスをすることもあるが、ピッチ上で最終的に決断するのは選手なんだ」

 どんな名将であれ、順風満帆な指導者キャリアを送れるわけがない。これまでのやり方そのままでうまくいくこともない。誰もが様々な試練を乗り越えて、成熟していく。

 鹿島アントラーズという新天地を求めたヴァイラーは、“一緒に考えてくれる責任感と自立心のある選手たち”をどのように導き、最適な方程式を見つけ出すのだろうか。

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