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JリーグPRESSBACK NUMBER
「じゃあ、やれや!」大久保嘉人がペットボトルを投げつけた日…風間八宏と考える「なぜ日本の指導者は“ヤンチャな選手”に戸惑うのか?」
posted2021/12/31 11:08
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
J.LEAGUE
「大久保はフロンターレに合わないんじゃないか?」
Jリーグ史上最も得点力に優れたストライカーが、現役生活に幕を下ろした。
大久保嘉人(39歳)はセレッソ大阪、マジョルカ、ヴィッセル神戸、ボルフスブルクなどでプレーし、特に存在感を放ったのが2013年から在籍した川崎フロンターレ時代だ。J1得点王に3度輝き、J1通算得点で歴代1位に立った。
ただし、当時のフロンターレの監督が風間八宏でなければ、また違ったキャリアになったかもしれない。
発売された『風間八宏の戦術バイブル』(幻冬舎)に、こんなエピソードが明かされている。
2012年末、大久保がフロンターレの補強候補になった際、強化部の中から「チームカラーに合わないんじゃないか?」と不安視する声があがった。ピッチ上の荒々しい振る舞いから、“やんちゃ”な印象があったからだ。
それに対して、風間はこう答えた。
「あまり主張をしない選手が多いフロンターレには、まさに必要なタイプだ。あのエネルギーをチームに入れたら絶対にうまくいく。ぜひ獲得して欲しい」
風間の見立ては正しかった。中村憲剛らによってチャンスを作れるようになっていたチームに、「密集地帯でフリーになれるFW」というラストピースがはまり、爆発的な得点力が生まれた。
日本サッカー界では問題児のレッテルを貼られて、フェードアウトする選手が少なくない。風間は強烈なキャラクターを持つ選手を、なぜ輝かせられるのだろうか?
「じゃあ、やれや」ヨシトがペットボトルを投げた日
――一般的に日本の指導者は、やんちゃな選手の扱いに苦戦している印象があります。風間さんはなぜだと思いますか?
「私からしたらエネルギーがあることは武器なんですよね。噴火寸前の火山のような選手がいたら、噴火させてあげればいいんです。大事なのは噴火の力をどう使うかです。
もしかしたら日本では、噴火を止めることばかり考えている指導者がいるのかもしれませんね。
火山になれていない選手を一生懸命教えて、火山になれ、火山になれと言う。なのに火山になった選手がいると、手に負えないと言う。矛盾していますよね。
爆発寸前の火山を噴火させてあげれば、そのエネルギーで周りもついてくるんです。そのエネルギーを止めちゃうから、いろいろな問題が起こる。やりたいなら徹底的にやらせてやればいい」
――大久保選手はまさにいい意味で火山を爆発させたわけですが、やはりすさまじいエネルギーを持っていましたか?