JリーグPRESSBACK NUMBER
鹿島の監督に就任したスイス人指揮官レネ・ヴァイラーってどんな人? 「ペップのようだ」と評されるその指導哲学とは
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/12/27 17:03
鹿島初のスイス人監督として招かれたレネ・ヴァイラーは、いったいどういう指導者なのか。現地で聞こえてきた本当の評価とは?
並行して、選手として最後にプレーしたFCビンタートゥールで指導者の道を歩み始めた。トップチームのアシスタントコーチに抜擢されたのだ。
ビンタートゥールとFCザンクト・ガレンでフットボールディレクターと暫定監督を務め、アンダーカテゴリーやFCシャウハウゼンで監督を経験して迎えた2012-13シーズン、FCアーラウというクラブで1部リーグ昇格を実現。翌年は残留に導いたことで、監督として注目を集めるようになった。
ニュルンベルク監督時代には長谷部とも対戦
アーラウはスイスでも非常に経営規模の小さいクラブで、1部残留は他クラブにおけるリーグ優勝と同じくらいの快挙だ。
その後、2015-16シーズンにはブンデスリーガのニュルンベルクを率いて2部リーグで3位に食い込み、昇格まであと一歩と迫った。しかし、入れ替え戦でフランクフルトに敗れ、その夢はかなわなかった。
ちなみに、対戦相手のフランクフルトには長谷部誠がおり、入れ替え戦では2試合ともフル出場を果たしている。2016-17シーズンはベルギーの名門RSCアンデルレヒトを率い、クラブを4年ぶりとなるリーグ優勝へ導いた。
スイスはフランス語、ドイツ語、イタリア語、ロマンシュ語と、国語が4つもある国だ。それぞれの言語圏に、それぞれの考え方や習慣がある。そんなスイスで監督を務めるには、確かな哲学と柔軟なアプローチがなければならない。
丁寧に考え、配慮を怠らない指導者
ヴァイラーのバックボーンと言えるスイスのサッカー事情が知りたくて、チューリッヒ近郊にあるバッサースドルフ(現在6部所属)というアマチュアクラブでプレーしている飯野多希留に話を聞いてみた。
「うちの監督はイタリア人。チームメイトにはハーフが多いですね。ポルトガル系、アルバニア系、コソボ系とか。僕はドイツでもサッカーをしてきているんですが、肌感覚だとドイツの方が直接コミュニケーションを取って来る印象です。悪いプレーをしていたら、悪かったとダイレクトに言われる。スイスの場合は、ダイレクトなコミュニケーションが少ないかもしれません。他の人から話を聞いてもそうですね。国民性というか、局面的に感情的にはなるけど、終わったらすぐ気持ちを切り替える傾向があると思います」
選手個々で異なる性格や志向があるのに加え、文化圏も違うのであれば、指導者の発言の受け止められ方も異なってくる。
そんなつもりで言ったわけでなくても、ネガティブに解釈されたらお互い苦しくなる。スイス紙のインタビューでヴァイラーがこう言っている。
「私は選手に何か伝えるとき、いつも熟考する。2人きりのときに話すべきか、チームの前で伝えるべきか。大きな声で言うべきか、小声で言うべきか。説明口調で伝えるべきか、感情的に訴えるべきか。長く話した方がいいのか、短くまとめた方がいいのか」