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《井上康生ジャパンの最重要人物》岡田隆が感じた「選手はスーツを着て集合」の“不合理”…康生「意味ないと思うでしょ?だからいいんですよ」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTomosuke Imai
posted2021/12/28 11:02
柔道男子日本代表のコーチを務めた岡田隆氏。骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍している
1つは、同時に脳が筋肉の使い方を学習できる。もう1つは、余計な筋肉は付かない点ですね。筋肉って重いので、なくて済むならない方がいい。ただ、今の世界レベルの大会で勝つために、柔道だけで必要な量の筋肉が付く選手はほとんどいない。だったら、短時間で、効率よく筋肉を付けましょうよ、という話なんです。野村さんも階級がもう1つ上だったら、ウエイトをやらなければならなかったと思いますよ。その階級に必要な筋肉は足りていなかったので。
――康生さん自身はウエイトに対する抵抗感はなかったのでしょうか。
岡田 康生監督は現役時代から、ウエイトを相当やり込んできた人ですから。彼は100キロ以下級と、100キロ超級を経験しているので、ウエイトの重要性を人一倍、痛感していたのだと思います。スペックだけで言えば、彼は「ど天才」ですよ。あの投げ技のセンスは、筋肉どうこうという次元じゃない。ただ、そのど天才でも、筋肉量の差はどうしようもなかった。100キロ超級になると、120キロとか、130キロの選手がゴロゴロいるわけですよ。その中で、めちゃくちゃ才能ある人間が、めちゃめちゃウエイトをやって、やっと勝てていたわけです。
「最初は基本的な講習会を開くところから…」
――ロンドン五輪で「金メダルなし」に終わり、その時、各階級が感じたであろう世界の壁を、康生さんは、現役の時からずっと感じ続けていたわけですね。
岡田 ご自身の経験から、日本人選手もいずれウエイトに取り組まないわけにはいかないという結論に早々に行き着いていたと思います。康生監督が現役時代によくやっていたサウンドランジ(左右に脚を踏み出して戻る種目)というトレーニングがあるんですけど、80キロぐらいのバーベルを持って、まったく軸がブレずに左右にスパン、スパンと切り返す。信じられない。康生監督はいまだに筋トレをやっているのですが、動きも見た目もキレキレですよ。
――超人ですね。
岡田 ほんとそうです。康生監督は僕からすると筋肉をつける天才でもあるんです。トレーニングをした時の筋肉の反応がすごく早い。筋肉の成長にも個人差があって、一気に増えるけどすぐに止まってしまう人もいれば、少しずつしか増えないけどなかなか止まらない人もいる。でも、康生監督は、早くて止まらない。
最初はウエイトの基本的な講習会を開くところからのスタートでした。しかし、そこからの吸収が極めて早かった。僕もボディビルダーなので日常的にトレーニングをしていました。そうすると、コーチ陣もやり始める。そういう意識の高い人ばかりの環境なので、選手もごく自然にウエイトをやるようになっていました。