酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
勝ち運に見放された田中将大、覚醒間近の佐々木朗希、完璧だった山本由伸の来季はどうなるか《成績で見る勝因敗因/パAクラス》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS/Sports Graphic Number/Kyodo News
posted2021/12/30 11:08
則本昂大、山本由伸、佐々木朗希。パ・リーグでAクラスに入った3球団の投手に2022年も注目したい
子細に見れば、中嶋聡監督は、的確なコンバートを実施している。一つは外野の宗佑磨を三塁に回し、内野の福田周平を中堅に回したこと。経験不足を感じさせることもなくはなかったが、2人は新しいポジションを無難にこなすとともに、福田1番、宗2番という上位打線を形成した。強いチームはレギュラーが固定されているものだが、福田、宗、吉田正、杉本と上位打線が決まったことで、勝利へ向けてのストーリーができるようになった。
もう一つのコンバートは遊撃の安達了一を二塁に回し、その遊撃にまだ19歳の紅林弘太郎を抜擢したこと。かなり思い切った布陣だったが、紅林は特に後半から勝負強い打撃と守備範囲の広さでチームに貢献するようになった。今季は下位だったが、来季は中軸を打つ可能性もあるだろう。
来季も優勝候補の一角ではあろうが、一抹の不安もよぎる
吉田正尚が故障で2度戦線離脱した際は、杉本、紅林らが踏ん張った。また代打で渋い働きをしたアダム・ジョーンズは選手への良い影響も含めて特記しておくべきだろう。
投手陣は前半、まだ調子の上がっていなかった山本に代わって宮城がエース格で頑張った。後半は「無双」になった山本が引っ張り、この2人が優勝の最大の要因だった。残る先発投手陣はそれほどの成績ではなかったが、打線の援護もあって試合を作ることができた。
救援陣では、平野佳寿の復帰が大きかった。もともと「抜群のクローザー」ではなく、打たれながらもまとめていくタイプだったが、走者を出しても表情を変えない円熟の投球で試合を締めくくった。セットアッパーはヒギンスを除いて信頼に足るとは言えなかったが、中嶋監督は「今使える投手」を辛抱強く起用していた。
来季、実質的に2年目ともいえる杉本、宮城がライバルチームのマークも厳しくなる中で、今年と同じ活躍ができるかどうかについてはやや疑念がある。ヒギンスが抜ける救援陣も一抹の不安がある。
そして山本由伸だ。今季、沢村賞を受賞したが、レギュラーシーズンで2911球、さらにCSでは126球完封、日本シリーズでは6回112球、9回141球と大車輪の活躍だった。合計3290球を投げた影響が、翌年どういう形で出るか。
オリックスは来季、当然優勝候補の一角ではあろうが、余りにも伸びしろが大きかった分、下位に逆戻りする危険性もはらんでいるという印象だ。<セBクラス編に続く>