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「ウマ娘」に“実名出演”で話題に…細江純子が肌で感じた影響力と“大ヒットの理由”「馬にも個性がある。その視点が好きなんです」 

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音部美穂

音部美穂Miho Otobe

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2021/12/24 11:04

「ウマ娘」に“実名出演”で話題に…細江純子が肌で感じた影響力と“大ヒットの理由”「馬にも個性がある。その視点が好きなんです」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

アニメ版「ウマ娘」への実名出演でも話題になった細江純子は、現在「スナックズンコ」のアドバイザー役としても活動中

ウマ娘は「私はすごく面白いと思いました」

 特筆すべきは、馬の耳と尾を持つ「ウマ娘」と呼ばれる少女たちが、スペシャルウィークやサイレンススズカ、ゴールドシップなど往年の名馬の名前と性質を受け継いでいること。これが、「ウマ娘」が競馬ファンからも受け入れられている理由の一つだろう。

「実は、当初プロデューサーの方は『馬を美少女化するなんてふざけている、と反感を買うのじゃないか』と心配していたようでしたが、私はすごく面白いと思いました。馬には一頭一頭異なる個性があり、『ウマ娘』では、それが見事に表現されている。たとえば、サイレンススズカだったら旋回癖があるとか、ちょっと寂しがりやとか」

「誰も傷つけずに、馬の状態を伝えるために」

 馬を「〇〇ちゃん」と呼んだり、まるで我が子のことかのように愛おしそうに馬の特徴を語るなど、“擬人化”という点で、細江の解説は「ウマ娘」に通じるところがある。

 厩舎やパドックに足を運んだからこそ知りえた細かな情報を、テレビ画面や紙面の向こう側にいるファンに伝える。それは、細江がホースコラボレーターとして最も大切にしてきたことだった。

 たとえ不調であっても、調教師は立場的に「調子が悪い」とは言いづらいだろう。でも、人間のアスリートに波があるように、馬にも調子の上下は必ずある。ファンはそれを知りたいはず。細江はそう考えてきたからだ。

「誰も傷つけないように、馬の状態を伝えるにはどうしたらいいのか。そう考えた結果、たどり着いたのが『調子がいい、悪い』と断定するのではなく、特徴を表現することだったんです。たとえば、エアシェイディは緊張でおしっこが出なくなることがあり、そうなるとレースでも走れない。反対に、レース前におしっこが出れば結果が良くなる。それで『今日はおしっこ出たから走ると思います』と伝えたこともありました」

タイキシャトルの嘶き、ゴールドシップの威嚇…すべて“個性”

 JRAの公式YouTubeチャンネルに、細江が「細ペン先生」として過去の名馬を紹介する「3分で分かった気になる名馬」のコーナーがある。ここでも細江は、取材で得た小ネタをふんだんに盛り込んでいる。その一つがタイキシャトルだ。

「タイキシャトルは、レース前のパドックで嘶く癖があったんです。彼は生涯の成績で2回だけ負けているのですが、負けた時のパドックでは嘶かなかった。‘98年、フランスでGIジャックルマロワ賞を制した時は、パドックで雄叫びを上げたので、岡部幸雄騎手は安心してレースに挑めたと聞きました」

【次ページ】 「ウマ娘」のヒアリングで実感した“自分がやってきたことの意味”

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