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「ウマ娘」に“実名出演”で話題に…細江純子が肌で感じた影響力と“大ヒットの理由”「馬にも個性がある。その視点が好きなんです」
text by
音部美穂Miho Otobe
photograph byKeiji Ishikawa
posted2021/12/24 11:04
アニメ版「ウマ娘」への実名出演でも話題になった細江純子は、現在「スナックズンコ」のアドバイザー役としても活動中
また、“芦毛の暴れん坊”と呼ばれ、絶大な人気を誇ったゴールドシップについては、こんな裏話も。
「ゴールドシップといえば、‘14年春の天皇賞でのスタート前、フェノーメノに向かって威嚇するように吠えたのが語り草になっています。まるで地響きのような野太い声で、恐怖を覚えたほどです。レース後、担当厩務員の今浪隆利さんに話を聞いたところ『この中で一番強いのはフェノーメノと分かっていたから、ケンカを売ったんじゃないか』と。そういったことから馬にも人間同様に個性があることが分かってくる。私は、その視点が好きなんです」
「ウマ娘」のヒアリングで実感した“自分がやってきたことの意味”
競馬といえば血統を知ることこそ重要というイメージがあるが、細江は「血統を知らなくても競馬を楽しむことはできる」と断言する。
「血統は、ある程度の年月競馬をやっているか、初心者ならよほど勉強しないと把握するのは難しい。『競馬やるなら血統を知らないと』というのは、もっともな意見ではあるのですが、それが競馬へのハードルを上げてしまっている気がします。
それよりも、馬の個性やキャラクター、そこに人間がどのようにかかわっているのかという点に私は面白みを感じてきました。私の解説に対して、当初は『馬を擬人化するな』といった批判もありましたが、一方で、『細江さんの解説で競馬を身近に感じた』といってくださる方もいる。
また、『ウマ娘』の制作に際しては、名馬たちの個性や過去のエピソードなどについてヒアリングを受けたので、それが反映されていると思うと、非常に感慨深いですね。自分がやってきたことにも意味があったんだなって……」
25年前、女性初の騎手としてデビューするも、おどおどして、下ばかり向いて歩いていた少女が、時を経てこのような形で活躍するとは、誰が想像しただろうか。
細江が積み重ねてきた日々。それは、後に続く女性騎手の道標となっただけでなく、競馬解説から「ウマ娘」まで、様々な形となって花開いている。《#1、#2からつづく》