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「当時から三笘と旗手はずば抜けていました」上田綺世にとっての“代表”と控えめな自己評価のワケ「僕は井の中の蛙でしかない」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2021/12/09 17:04
第33節のFC東京戦で決勝ゴールをあげた上田綺世。日本代表ではチームメイトとなる長友佑都と激しく火花を散らした
「大学サッカーのなかで僕が成長したというよりも、周りのレベルが高かったから、自分の武器に集中できた。味方のレベルを理解して、自分の力を出せるよう周囲に要求することで、おのずと僕もそのレベルへ引き上げられた。だから、考え方としてはシンプルなものでした。そして、奇跡的に代表に選ばれた。代表なんて縁のない人生だったから、最初にニュースを見たときは間違いかと思いました」
「コパについて話すことがない」理由とは
2017年12月、M-150杯 2017に出場したU-20日本代表は、森保一監督が率いた。東京五輪へ向けたチームには、フィールドプレーヤーでは上田のほかに筑波大学の三笘薫、順天堂大学の旗手怜央、産業能率大学の小松蓮という4人の大学生が選ばれた。
「当時から、三笘と旗手はずば抜けていました。大学サッカーの二大巨頭。そういうふたりと僕は一緒じゃないよと思いました。何かの手違いで代表に呼ばれましたが、僕は環境に順応することをモットーとしてやってきたので、代表という新しい環境へ行っても、何かを感じて、見つけて、帰ってきて、トライして、できるようになったら次にトライする。結局、子どものころと同じことなんですよね」
2年後にはコパアメリカにも出場し、ユニバーシアード優勝にも貢献。その直後、2021シーズンの加入が内定していた鹿島へ大学在学中での加入を決断している。南米で体感した危機感がプロ入りを後押ししたと想像するのは容易い。しかし、上田の答えは少し違った。
「正直、コパについてあまり話すことがないんです。ただ、今までやってきた全部を世界にぶつけるチャンスの大会で、自分の実力を知ったということだけなので。たとえば、僕が代表へ行ったあと、『どんな課題が見つかりましたか?』という質問をメディアの方から受けることがありますが、単純に『課題はこれです』というものではないんです。それはデータでもないし、言語化もできないものだから。たとえば『球際の強さ』にしても、なぜ球際で勝てなかったのかを考えると、どこの筋肉が弱いのか、体の当て方の問題なのか、感覚的なものなのか……。そういうことは、コパに限らず球際で競うたびに出る課題なんですよ。それを日々どう変えていくのかを試行錯誤し、戦い方を見つけていくというのが、僕の課題との向き合い方です。日々の練習のなかで、『これはコパのときにも感じたな』という違和感というか、些細な感覚、感情、ギャップ、すれ違いみたいなものが埋まっていくのが課題克服なんですよね」