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JリーグPRESSBACK NUMBER
「当時から三笘と旗手はずば抜けていました」上田綺世にとっての“代表”と控えめな自己評価のワケ「僕は井の中の蛙でしかない」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2021/12/09 17:04
第33節のFC東京戦で決勝ゴールをあげた上田綺世。日本代表ではチームメイトとなる長友佑都と激しく火花を散らした
ひとつの違和感が消えたとしても、消えたからこそ、新たな違和感が生まれるのもアスリートの現実なのだろう。
「サッカーというスポーツのなかで一番苦しい課題は、スピード感と強度だと思います。僕自身もプロに入って、そこで苦労したと感じています。高卒1年目でプロの環境でやれるのは、たとえば荒木(遼太郎)もそうですけど、ずば抜けた技術やスピードに順応できる柔軟性と吸収力があるから。対応できなければ、そのカテゴリーではやっていけない。僕は技術が長けている選手じゃないので、動き出しもスピードに合わないとタイミングよく動き出せない。それを身につけるのが一番苦しんだことじゃないですかね。余裕を持ってプレーできるまでには時間がかかりました」
A代表以前に「鹿島でタイトルを逃したのがすべて」
プロ入り2年半で、2021年のJ1ゴールランキングでは4位に入っている。得点数は上田にとってどういう意味を持つのか?
「数字には興味がないんですよね。僕は1点に執着しているから、合計で何点獲ったかは気にならない。点を獲るのは、チームのためであって、自分が快感を得るためじゃない。中学、高校、大学と、FWの獲る1点の価値が重くなるにつれて、自分の得点よりも『チームを勝たせなくちゃ』という思いが強くなりました。点を獲る理由はチームを勝たせるため。だから、自分が何点獲ったかとか、必ず自分が獲るというのにはこだわらなくなってきましたね。いいことかどうかはわからないけど」
1点の積み重ねが年間得点数であることには変わりはない。それでも上田が目指すのは1試合で量産するFWではなく、毎試合ゴールを決めるストライカーだった。
「3試合で3点獲る選手がふたりいて、1試合に1点ずつ獲る選手と3試合目にハットトリックする選手なら、前者のほうが価値はあると思うんです。だから、僕はそういう選手になりたい。どんな環境でも、どんな相手でも点を獲れる選手に。だから総得点数、数にこだわるのが苦手なんです。僕はただ必要なときに点を穫れる存在でありたいから」
日本代表に入る。W杯で活躍する。そんなふうにわかりやすい目標を提示してほしいと考えるメディアは多いだろう。けれど上田は、そういった個人の目標を必要としていない。
「僕は『代表に入るために頑張ってきました』と言ったことはない。代表に入りたいからサッカーをやっているわけではないですし。今、属しているチームでの結果がすべてだと考えています。それが認められれば、代表にも選ばれると思うので。今季はタイトルを目指していたのに、それを獲れなかった。僕の結果はそれだけなんです。A代表に選ばれたとかの前に、鹿島でタイトルを逃したのがすべて。僕はそう思っています」