ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「コレクティブな意志は示したが…」オマーン戦の最少得点勝利をトルシエが高評価する理由と突破への課題
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/11/22 17:03
多くの改善点を指摘しつつも、トルシエは日本代表の「勝利への意欲」を評価した
「彼はよかったし、左サイド(中山)もよかった。彼らのサポートが素晴らしく、ペナルティエリアにも多くの選手が入って行った。
批判すべき点があるとすれば、運動量が多いわりにさほど効果的ではなかったことだ。あれだけ動いたのだから、もっと何かが出来てもよかった。重さが足りないし(註:日本のプレー、特にゴール前が軽いという意味)、フィニッシュに関して個人の判断も適切ではなかった。終盤まで70%近くボールを保持しながら、1対0というのは妥当な結果とはいえない。
だがいい。日本はやるべき仕事をやり遂げた。オマーンの地で彼らに勝つのは簡単ではない。そこで日本は見事に態勢を立て直し、健全な状態に戻ったことを示した」
試合の流れを変えた三笘の投入
――しかし前半はむしろベトナム戦よりも酷かったです。攻めてこないオマーンに対して、ボールを支配するだけで動きもコンビネーションも不十分で、得点の気配はまったく感じられませんでした。後半はスタートから三笘を投入して……。
「左サイドの13番(三笘)が試合を変えた。たぶんハーフタイムに、監督と選手がよく話し合ったのだろう。意識の変化が感じられたからだ。選手たちが覚醒し、後半は積極的になった。
前半はあまり見ていないが、後半の日本は完全にイニシアチブを握った。ゲームを完全に支配したことが勝利を導いた。日本が試合を構築し、勝利を築きあげた。
たしかにまずいプレーもたくさんあったが、最終的に日本は報われた。それもベトナム戦同様に伊東の素晴らしいゴールによって。彼が得点を決めた瞬間は、得点した伊東を含め5人がゴール前に攻め上がっていた。そこには得点したいという強い意志があった。恐らくハーフタイムがターニングポイントになったのだろう。そこで何かが起こり、選手たちは奮起して後半に臨んだ。まさにレモンターダが起こったわけだ」
(つづく)