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「コレクティブな意志は示したが…」オマーン戦の最少得点勝利をトルシエが高評価する理由と突破への課題
posted2021/11/22 17:03
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
オマーン対日本戦のキックオフ直前に、フィリップ・トルシエからメッセージが届いた。放映するテレビ局やネットを見つけられずに、試合を見ることができないという。
イビチャ・オシムが試合を見られないのははじめからわかっていた。私もネットで検索したが、オーストリアでもドイツでもオマーン対日本をライブ放映するテレビ局は見つけられなかったからだ。トルシエも駄目かと多少気落ちしながら試合後に電話をすると、前半はともかく後半はすべて見たとの答えが返ってきた。聞けばネット配信を何とか見つけたということだった。
最少得点の勝利ながら、オマーンを着実に下した日本の後半のパフォーマンスをトルシエは高く評価した。監督の視点、それも第三者の視点から見えるものは、私たち当事者が見るものとは少し異なるのだろう。
個人的には、森保一監督は日本が予選を突破するための最も着実な戦い方を選んでいるように見える。リスクも冒さずギャンブルもしない。スタートからの2敗は想定外かも知れないが、だからといって思い切った賭けに出る必要もないし、2位に入るための最善の戦いに徹する。その目的を違えてはならない。将棋に例えれば、大向こうを唸らせ人々を興奮させる升田将棋ではなく、地味だが着実に勝利に辿り着く大山将棋である。今から50年以上前の話。例えが古すぎて、読者には何のことかわからないかも知れないが。
トルシエはオマーン戦に何を見たのか。そしてオーストラリアを抜いてグループ2位に浮かび上がった日本の今後をどう展望しているのか。トルシエとの電話インタビューを、前後2回に分けて掲載する。まずはその前編から。(全2回の1回目/#2はこちら)
日本には攻撃への強い意欲があった
――試合は見ましたか?
「主に見たのは後半からだが、感じたのは日本の勝利への意欲であり、イニシアチブをとって何かをしようとする意志だ。勝つために日本がゲームをコントロールした。コレクティブな意志も一体感も感じられたし、チームが少し解放された印象を持った。責任感の重さを克服したように見えた。
2位を確保するという明確な目標が日本にはあった。後半戦開始直前にオーストラリア戦の結果が出ていて、勝てば2位に浮上することがわかっていた。私は後半に本物の意志を感じた。積極的にボールを前に運び、ゴール前にもたびたび進出した。攻撃への強い意欲があった」