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「キラーパスを出せる選手が必要だ」「プレーが単調でリズムの変化が…」ベトナム戦でトルシエが見た《日本の最大の弱点》とは
posted2021/11/13 11:03
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
日本がハノイでベトナムを1対0と下し、勝ち点6が絶対に必要なアウェー2連戦の初戦を勝利で飾った。
数カ月前までハノイ郊外のPVFアカデミーのディレクターを3年間務め、ベトナムU-19代表監督も兼任していたフィリップ・トルシエは、日本が難しい戦いを勝ち切った試合をどう見たのか。日本とベトナムの双方をよく知るトルシエに話を聞いた。
――試合は見ましたか?
「ちゃんと見たのは後半だ。前半は画像が鮮明ではなく、見にくかったからだ。この試合に関しては、簡単な勝利だったと結果が出た後では言える。私がそう感じたのは、日本が何ら消耗したわけではないからだ。後半の日本はゲームをよく支配した」
以前の代表に比べると能力の面で劣っている
――そうですが前半は……。
「前半はまず相手の出方をうかがう。日本がそうだったからベトナムも最初はいいリズムを作り出せた。いつもよりずっとアグレッシブな戦い方を仕掛けようとした。
だが試合の背景も考慮する必要がある。ベトナムには失うものは何もないが、日本はすべてを失う可能性もあった。だからプレッシャーも強く、試合開始から15分間はボクサーが相手の様子を窺うように慎重になった。日本がベトナムの出方を見たのに対し、ベトナムはアグレッシブにボールを前に運んで日本にこの試合が簡単ではないことを知らしめようとした。
しかし日本の先制点が早い時間(17分)に生まれた。そこから日本は試合をコントロールして、ベトナムはプレーのレベルを上げることもアグレッシブにプレーすることも難しくなった。ボールを保持してパスを3本4本と繋げられない。素晴らしい試合とはいえないが、日本は容易な状況でゲームを続けることができた。
後半のベトナムは中盤から前に進めなかった。得点機会を一度も作れず、日本が完全にゲームをコントロールしたが、決してビッグゲームではなかった。
この日本代表は、以前の代表に比べると能力の面で劣っている。コレクティブで優れた選手も揃えているが、卓越したものを示したとは言えない。示したのはこのゲームを容易に勝つだけの力だ」
――ではこのチームの可能性はどうでしょうか。どこに進歩の余地がありますか?