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「PFP1位を狙うなら井上尚弥を倒すしか…」26歳中谷潤人“完璧なKO”に冷静な英国人記者も絶句「(中谷が)負ける姿は想像できない」
posted2024/10/17 11:02
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
中谷潤人(M.T)の強さはまたも圧倒的だった。10月14日、有明アリーナで行われたWBC世界バンタム級タイトル戦で王者・中谷はペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)に強烈な6回TKO勝ち。これまでダウン経験がなかったベテランを左ストレートで2度も倒しての完勝で、戦績を29戦全勝(22KO)に伸ばした。
3階級目となったバンタム級でも快進撃を続ける26歳は今後、どこに向かうのか。統一戦の相手候補とされた井上拓真(大橋)が13日に敗れた後で、ターゲットとすべきは誰なのか。そして、世界中のボクシングファンが待望するスーパーファイト、井上尚弥(大橋)戦に近づいていると言えるのか。
試合後、リングマガジンの元編集人であり、現在はスポーティングニュースで健筆を振るう英国人ライター、トム・グレイ氏に意見を求めた。グレイ氏は軽量級、アジアのボクシングにも精通しており、その言葉には常に説得力がある。
【以下、グレイ氏の一人語り/全2回の1回目、後編も公開中】
「実力差は歴然としたカードだった」
今回も中谷はパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングにランクされるボクサーらしい強さを見せてくれました。正直なところ、私はもう少し早く決着がつくのではないかと思っていました。タイ出身の挑戦者は76勝(53KO)1敗という見事な戦績を引っ提げての来日でしたが、強敵相手の勝ち星はほとんど含まれていません。
ぺッチが示したことがあるとすれば、一定の打たれ強さを備えていること。初回、2回に左をもらい、コンビネーションを浴びたにもかかわらず、粘りは見せました。とはいえ、結局は中谷が2度のダウンを奪って格の違いを見せつけ、特に最後のKOシーンは見事だったと思います。
ぺッチがいい戦いをしているなと思えたラウンドは、両選手が近い距離でパンチを交換し合った5回くらい。その回も中谷はあえてその位置に立ったように思え、主導権は常に王者の手中にありました。序盤は比較的静かな戦いではありましたが、支配的といえる内容、結果だったと思います。先ほど話した通り、ぺッチが予想以上に中谷のパンチに耐えたこと以外、実力差は歴然としたカードではありました。