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「キラーパスを出せる選手が必要だ」「プレーが単調でリズムの変化が…」ベトナム戦でトルシエが見た《日本の最大の弱点》とは 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2021/11/13 11:03

「キラーパスを出せる選手が必要だ」「プレーが単調でリズムの変化が…」ベトナム戦でトルシエが見た《日本の最大の弱点》とは<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

トルシエは勝ち点3に対し一定の評価を与えたものの、熱量のないチームに対しては容赦なく批判した

――しかしリズムを変えるには、中村俊輔や小野伸二のような……。

「キラーパスを出せる選手が必要だ。それがプレーを加速することにもなる。今のプレーでは相手が容易に予測できる。守備に関してはコレクティブで簡単にボールは失わないが、決定的なパスはないうえにラストパスも正確性も欠いている。ただ相手のディフェンスが素晴らしく組織立っていたのも確かで、5人の守備ラインがブロックを形成して日本にスペースを与えなかった。

 だから簡単ではなかったのに加え、1点をリードした日本は相手が攻撃に出るのを待っていた。だが相手は本気で前に出ては来ず、日本は自分たちのプレーを変えるための戦略を持たなかった。日本の戦略は、ベトナムに自分たちのブロック維持を犠牲にしてでも攻撃を仕掛けさせることだったが、ベトナムはそうはしなかった。彼らにはそこまで攻める能力はなかった。3本もパスを繋げないのだから。

 繰り返すが、日本はスピード豊かな選手たちを生かすスペースを見いだせなかった。先制点はカウンターアタックから生まれた。深く引いた相手から奪ったゴールではない。高いディフェンスの隙を突いてカウンターアタックを仕掛けた。ゴール前の状況は日本の選手が2人に対しベトナムは6人いた。2対6の状況で日本はゴールを決めた。これは日本がゴールを決められる唯一の状況だった。というのもこのときベトナムは高い守備を敷いていたからだ。試合が始まってまだまもなく、カウンターアタックを日本は仕掛けられた。だがその後は同じ状況は生まれなかった。ベトナムが後方に退いて、日本がカウンターを仕掛ける機会は消滅した」

それでも日本は勝つ術を持っている

――取り消された伊東のゴールもベトナムのCKから始まったカウンターアタックでした。

「その通りで、森保の戦略は悪くはなかったが、別のやり方も模索すべきだった。固いブロックの守備に対して、日本はうまく対応していく必要があった」

――次の相手であるオマーンは、ベトナム以上に組織立って規律もあるチームといえます。

「選手の個の能力でもベトナムを上回っている。ボールを保持することができて、モチベーションも高い」

――攻撃では個で違いを作り出せる選手が2~3人います。

「ベトナムよりもバランスのとれたチームだ。アラブのチームとの対戦は常に簡単ではない。かなり拮抗した試合になるだろう。だがそれでも日本は試合に勝つ術を持っている。難しいことに変わりはないが。

 これで十分か?」

――メルシー、フィリップ。

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