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「死んで楽になるなら死にたい」悲劇から3カ月…張本智和の“50年ぶり金メダル”快挙はなぜ生まれたか? 五輪後に明言していた「ある計画」
posted2024/10/16 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
再び、「50年ぶり」の文字が躍った。
10月13日、卓球のアジア選手権男子シングルス決勝で張本智和が優勝した。長谷川信彦以来、男子シングルスでは日本勢として50年ぶりの金メダルである。
10月9日に女子団体決勝で日本が50年ぶりに中国を破り優勝したが、それに続いたことになる。
決勝では“世界ランク3位の中国勢”に勝利
決勝で迎えたのは、林詩棟(中国)。現在は19歳、中国男子の次代を担う期待を寄せられる選手であり、世界ランキング3位の実力者でもある。
第1ゲーム、林詩棟の武器とする威力あるバックハンドに押され、2-8と大きなリードを許す。それでも臆することなくバック対バックでも打ち合い、フォアで攻めて逆転、11-9で奪う。第2ゲームも11-6で連取。第3ゲームこそ相手のペースに持ち込まれて4-11で落としたが、引きずらなかったところに成長があった。第4ゲームでは強い気持ちをみせつけ、ラリーを続ける。それを象徴するように、最後はバック対バックの打ち合いを制し11-5。3-1で金メダルを手にした。
試合ののち、SNSにこう綴っている。
「最近はオリンピックから接戦で負けることが多く、悔しい思いをすることの方が多かったです。
スポーツは悔しい思いをすることの方が多いのは当然ですが、それを耐え続け、こうやって少しでも喜べる時間を積み重ねることに価値があると思います。
悔しい思いが多かった分、優勝の瞬間の気持ちは何にも変えられないものがありました。」
“まさかの敗戦”となってしまったパリ五輪
「悔しい思い」という言葉に思い起こされるのは、パリ五輪だ。
最初の種目、混合ダブルスには早田ひなと出場。優勝もあり得ると期待を集める中、初戦で北朝鮮のリ・ジョンシク、キム・クムヨンに敗れた。