ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「キラーパスを出せる選手が必要だ」「プレーが単調でリズムの変化が…」ベトナム戦でトルシエが見た《日本の最大の弱点》とは
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/11/13 11:03
トルシエは勝ち点3に対し一定の評価を与えたものの、熱量のないチームに対しては容赦なく批判した
――いろいろな状況……もともと準備の時間がごく限られていたのに加え、11人の選手がモスクワのトランジットで12時間飛行機の中に閉じ込められたことなどを考慮すれば、あなたが言ったように素晴らしい試合ではなかったけれども満足すべき結果だったと思います。
「日本はよく適応したと思う。準備が容易でなかったうえに、ベトナムでの試合は常に簡単ではない。さまざまな圧力・アグレッシブさに直面するからだが、日本はそこをうまく乗り切って、ベトナムの強い意志をうまくかわした。シリアスに戦ったと思う。守備は素晴らしく、守備陣は経験も豊富で屈強だった。
だが攻撃は、期待したほどではなかった。個人のパフォーマンスももっと期待していた。だからこの前の試合と同様に、日本は得点のための解決策を見出さねばならない。とりわけこれだけゲームを支配しているのだから。ボール保持率は実際には何%だったのか?」
――日本の63%に対してベトナムの37%です。
「それだけの保持率がありながら、得点チャンスは多くはなかった。相手GKのファインセーブが多くあったわけでもなかった。日本は屈強であり続けたが、何かにチャレンジすることはなかった。攻撃陣は個人で仕掛けるばかりだった。そんな風にして日本はゲームを全面的にコントロールした」
日本は個の力では違いを作れない
――森保はスピードのあるプレーを志向し、伊東を始めとしたスピードのある選手を起用しています。
「それはわかるが簡単ではない。とりわけ組織立った守備に対してはそうだ。ベトナムにしても大きなスペースを日本に与えず、スピードとプレーの速さをうまく生かすのは難しい。自分たちよりも優れたチームとの対戦では、相手の守備にスペースはできるだろう。ベトナムは違う。だから試合はちょっと膠着した。
連動性も十分ではなかった。自分たちよりも弱いチームに対しては、日本はもっとコレクティブにプレーすべきだ。相手が強ければ、違いを作り出すために速い選手を起用するのは納得できる。だが組織立った守備に対して、個の力で違いを作り出すのは難しかった」
――これまでの試合と同じ印象を持っているということでしょうか?
「率直に言って同じだ。日本は高いインテンシティでプレーできていない。プレーが単調でリズムの変化がない。その点で印象は変わらない。今の日本代表にはインテンシティが欠けている。どうしてそうなったのかは分からないが、ほとばしる熱さやエネルギー、インテンシティがこのチームにはない」