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ドラフトから1カ月…他球団スカウトの“傷心”「楽天ドラ1の吉野、2位で狙ってたんです」「右のスラッガーの値段が高くなってます」 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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posted2021/11/11 17:05

ドラフトから1カ月…他球団スカウトの“傷心”「楽天ドラ1の吉野、2位で狙ってたんです」「右のスラッガーの値段が高くなってます」<Number Web>

楽天から1位指名を受け、笑顔でポーズをとる吉野創士(外野手・昌平高)

「チームとしては、いけるかどうか、わからなかったんですけどね。でも、あの細い体だからこそ、あのしなやかさが出せるのか……筋肉量が増えた時に、どんな変化があるのか。いい意味でも、悪い意味でもね。体が大きくなったら、関節の可動域が狭くなったって例もあるらしいんで。なんにしても3年後、5年後が想像できない。そこのところが、なんとも魅力的だったんですけどねぇ……」

 よもやの「1位」だったそうだ。

「夏の状態がよくなかったでしょ、吉野。報道だと腰が痛いって出てましたけど、僕は、焦りのほうを感じてました。ちょうど夏前あたりからどんどん有名になって、あれだけ活字になれば、高校生、焦りますよ。いろんな期待に応えなくちゃいけない。いいときは、呼び込んで待ち構えてバットが出てたのが、夏は追いかけちゃって、たいへんだった」

「選手にホレるのが仕事ですからね」

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 しばらく「吉野」の話が続く。

「どうしても比べてしまいますよね、似たようなバッター見ると」

 木更津総合・山田隼外野手(2年・174cm70kg・右投右打)花咲徳栄・前田空一塁手(2年・176cm83kg・右投右打)。体型は違っていても、打球のスピードや飛距離が「吉野創士」を想起させるバッターが出てくると、思わず比べてしまうという。

「いや、もう、めちゃめちゃ引きずってますよ。惚れるのが仕事ですからね、僕ら。スカウトは選手に惚れ込めなくなったら、もうスカウトじゃないんじゃないですか」

 スカウトたちは、指名した選手の入団交渉と並行しながら、来季に向けて、アマチュア野球の現場に足を運ぶ日々を送る。

 ドラフトが終わって、まだ1カ月。

 指名できた喜びと、取り逃がした痛恨。悲喜こもごもの記憶もいまだ生々しく、心の中でなんとか折り合いをつけながら、「来季」に向かって前に進もうとしているのは、決して、グラウンドの選手たちだけじゃない。<大学野球編へ続く>

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