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ドラフトから1カ月…他球団スカウトの“傷心”「楽天ドラ1の吉野、2位で狙ってたんです」「右のスラッガーの値段が高くなってます」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
posted2021/11/11 17:05
楽天から1位指名を受け、笑顔でポーズをとる吉野創士(外野手・昌平高)
決して力まず、素直なセンター返しに徹するバッティングも、実戦経験、筋力、共に不足している「今」にふさわしいスタイルだ。
長い手足を伸びやかに躍動させて、大きなストライドで走る姿に、豊かな将来性を感じてしまったのは、きっと私だけじゃないだろう。
プロ野球スカウト「楽天ドラ1のホームラン思い出しました」
なんといっても、明秀日立打線でいちばん驚いたのが、センターを守る佐藤光成(さとう・こうせい)中堅手(2年・180cm75kg・右投右打)の打球のすさまじさだ。
こういうバッターで6番なのだから、あらためて、明秀日立打線の層の厚さに驚く。
右打席から右中間方向に思いっきりひっぱたいた痛烈なライナーがライトのグラブを圧倒して二塁打にしたのが佐藤の第2打席。6番であの打球か……とビックリしていたら、次の打席で腰を抜かした。
ドンピシャのタイミングで振り抜いたスイング。グァシャン!と聞こえたインパクト音を残して、ものすごい打球がレフトポールの右側めがけて真っ直ぐに伸びて、低い土手になっているレフトスタンド上空をそのまま飛び越して、向こうの木立の中に見えなくなった。
「すごい打球だったですね。吉野が大宮の上段に持ってったホームラン、思い出しましたよ」
今秋のドラフトで楽天に1位指名された吉野創士外野手(昌平高)が、広い県営大宮球場のレフトスタンド上段に持っていったホームラン。
あるスカウトが興奮気味に語ったのは、そのホームランとの比較だった。
「あのバッターもマークされますよ……来年は。右の飛ばせるバッターは人気ありますからね」
楽天ドラ1吉野は「2位で狙っていた」
今回のドラフトで、2位指名の真ん中あたりで、ソフトバンクが正木智也外野手(慶應大)を指名するまでの、頭から18人のうち、右打ちのスラッガータイプが6人指名されている。
中日1位・ブライト健太(外野手・上武大)
楽天1位・吉野創士(外野手・昌平高)
ロッテ1位・松川虎生(捕手・市立和歌山高)
日本ハム2位・有薗直輝(内野手・千葉学芸高)
中日2位・鵜飼航丞(外野手・駒沢大)
ソフトバンク2位・正木智也(外野手・慶応大)
「それ以外の12人は全員投手ですから、最上位の18人はピッチャーと右のスラッガータイプだけなんですよ。それぐらい、右打ちで長打力のある選手は値段が高くなってます。吉野なんて、ドラ1ですからね」
このスカウト、個人的に吉野は2位で狙っていた選手だと話す。