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ドラフトから1カ月…中日ドラ1・ブライト健太22歳の涙が止まらない「悔しいっす」「自分の青春でいちばん充実した4年間でしたから」
posted2021/11/12 17:10
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
「関東地区大学野球選手権大会」といっても、これだけではピンと来ない向きも多いと思うので、今月20日から始まる「明治神宮野球大会」(以下、明治神宮大会)の予選にあたる大会です……と説明すれば、わかってもらえるかもしれない。
明治神宮大会は、大学野球にとって、6月の「全日本大学野球選手権」と並んで、年にたった2回の全国大会なのだ。
ちなみに、明治神宮大会には「高校の部」もあり、春・夏の甲子園ほど有名ではないが、高校球児にとっては、「3つ目の全国」になる。
秋のリーグ戦の優勝校と2位校、関東には5つの大学リーグがあるから、合計10チームが深まりゆく秋の横浜に集合。明治神宮大会の出場権2つをかけて、熱戦を繰り広げる。ちなみに「東京六大学」と「東都六大学」については、単独で優勝校に出場権が与えられている。
来春学窓を巣立つ4年生にとっては、この大会が最後の「学生野球」になる選手たちもたくさんいるのだ。
巨人の育成ドラフト6位vs.来秋ドラフト1位候補
その「関東地区大学野球選手権」、今年は開会式直後の初日第1試合から、すごいことになっていた。
桐蔭横浜大・菊地大稀(4年・188cm93kg・右投左打・佐渡高)vs.白鴎大・曽谷龍平投手(3年・182cm72kg・左投左打・明桜高)。
巨人の育成ドラフト6位指名の大型右腕と、来年のドラフトで「1位指名も十分あり得る」とスカウトたちが評価する快速左腕との熾烈な投げ合いが続く。
まず、桐蔭横浜大・菊地投手だ。ほぼ1年ぶりに見た菊地投手の投球フォームが、別人のように良くなっていて驚いた。
テークバックでスーッと力が抜け、そこから自然と右手が高い位置に上がって、腕を振り下ろす段になって、今度はズバッと全身の力が右腕にこもる。フォームを見るだけで、スピードの乗った「生きたボール」が放たれるのがわかる。去年は、この逆だった。力を入れて腕を引くので、腕の上がりも悪いし、腕を振り下ろす時には、「入れる力」がなくなっているように見えた。
アベレージで140キロ後半が出ていて、それも無理している感じがない。自然な全身の連動が、当然の結果として、これほどの「アベレージ」を生んでいる。そんな印象だ。
落差はそれほどではないが、打者に近い位置で落下するカーブと、もともと菊地の持ち味になっていたキュッと滑るスライダー。
そのスライダーを右打者の内角に使うと、打者が顔をそむけるようにして、それがストライクになり、左打者には内角のきびしいコースに147キロ、148キロを続けて……とてもじゃないが「育成6位」のピッチングじゃない。