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「そんな振れんのかい!」オリックス中嶋監督が一番安堵した吉田正尚の“弾丸ライナー” T-岡田「チームの雰囲気が全然違う」

posted2021/11/11 11:09

 
「そんな振れんのかい!」オリックス中嶋監督が一番安堵した吉田正尚の“弾丸ライナー” T-岡田「チームの雰囲気が全然違う」<Number Web> photograph by KYODO

レギュラーシーズンのホーム最終戦では、茶目っ気たっぷりのスピーチでスタンドを沸かせた吉田正尚。日本シリーズ出場へ、頼れる主砲が帰ってきた

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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 頼れる主砲が帰ってきた。オリックス対ロッテのCSファイナルステージ第1戦で、「3番・DH 吉田正尚」がコールされると、京セラドーム大阪のスタンドから大きな拍手が沸き起こった。

 10月2日のソフトバンク戦で死球を受け、右手尺骨を骨折して以来、39日ぶりの実戦。その第1打席の初球、ロッテ石川歩の148キロのストレートを迷いなく振り抜くと、弾丸ライナーがセンターを襲った。中堅手・岡大海の正面だったためアウトになったが、オリックスベンチに「行ける」という空気が生まれた。

 試合後、中嶋聡監督は興奮混じりにそのライナーを振り返った。

「度肝抜かれますよね。ドゴーン!って。びっくりしたもん。そんな振れんのかい!って。あれでちょっと周りが安心したんじゃないですか」

 指揮官が一番安堵していたかもしれない。吉田を起用するかどうか、ギリギリまで悩んだからだ。

CS復帰に向けた吉田の「逆算」

 吉田は7日に打撃練習を再開したばかり。ファイナルステージ前日の9日には、増井浩俊、竹安大知を相手に5球ずつ6打席の実戦形式の打撃練習を行い、打席を追うごとにスイングに強さが戻ってきてはいた。吉田はこう手応えを語っていた。

「痛みや動きなど、実戦形式の中でしか確かめられないことがある。怖さを取ったりしていって、少しずつ強く振れるようになったのは自分でも確認できました。

 全治(の目安)からいくと、ちょっと(CSでの復帰は)難しいかなと思いましたけど、自分も含め、トレーナーの方も諦めず、最善を尽くしてきた。優勝にも勇気づけられましたし、“11月10日”というのが決まってから一層、そこに立ちたいという気持ちで、また自分のモチベーションが上がりました。10日から逆算して、しっかりやれる準備はしてきました」

 ただ10日の試合前の打撃練習では、スイングを加減していた。指揮官は迷った。

「バッティング練習を見ている限りでは、合わせる打ち方しかしていなかったので、どうかなーと。でも本人はどうしても出るということだったので、何かあるんでしょうね。大丈夫というそのポイントが。だから、そこまで準備できたのならいこうと決めました」

 監督の予想したように、吉田は計算していた。練習で強く振らなかったのは、患部にできるだけ負担をかけないため。試合後、こう明かした。

【次ページ】 「なるべく試合に取っておこうと思って」

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