箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
〈全日本優勝〉駒大エース田澤廉が明かす“知られざる苦悩”「主将になってからここまで、色々ありましたから」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2021/11/10 11:04
全日本大学駅伝の7区を走る駒澤大主将・田澤廉に激を飛ばす大八木監督
のちに全日本で5区を走る東山静也(3年)は、「田澤は1、2年の時は自分の走りに集中していたけど、キャプテンになってチーム全体を見るようになって、力が上がると気にもかけてくれた。それでやる気が出ました」と語る。同じく1区を走る佐藤条二(1年)も「田澤さんは練習中怖いんですけど、練習をやり終えると『頑張ったな』と言ってくれるんです。ちゃんと見てくれているんだなって思いました」と、嬉しそうに語った。
田澤は、自身の変化について、こう語る。
「キャプテンになって、練習でタレる選手がいると、『こいつ、調子悪いんかな』と気にするようになったし、以前は目が行っていなかったBチームも見るようになった。練習日誌とか面倒でつけたくないけど、書くようになった。チーム全体を見る意識がついて、陸上への意識が変わってきたかなと思います」
厳しさは練習だけではない。事件を教訓として、掃除や整理整頓など日常生活にも厳しさを求めることで隙や緩みを排除していった。同時に、1年生が活躍しやすい環境を作るべく、寮内の仕事を各学年で分担してこなすようにした。チームの隅々にまで田澤の目が行き届き始め、チームは競技と日常の両面で成長していった。
あとは、駅伝シーズンで結果を出すのみだった。
出雲駅伝で“まさかの惨敗”
学生3大駅伝の初戦、出雲駅伝は5位に終わった。
レース後、全力を出し切った田澤は吐き気を催すほど疲弊し、しばらく座ったまま動けなかった。大八木弘明監督は「自分の采配ミス」と敗因を語ったが、故障者が多くてベストメンバーが組めず、主力にもミスが出ていた。
田澤は落ち込む指揮官を見て、主将としての責任を痛感したという。
「主将になって、練習から引っ張っていく立場になったけど、故障者がたくさん出て、出雲も5位に終わった。自分の方針が合っているのかな、とかいろいろ考えることがありました」
田澤は、個々の選手のレベルアップに繋げるべく練習の質を上げた。夏合宿も3、4年生の中間層のレベルの押し上げも含めて、全体のレベルアップがないと3冠達成は難しい。そう感じたからこそ、先頭に立って厳しい練習をこなしてきた。
だが、夏が終わると故障者が続出し、出雲で結果を出せなかった。東山は、田澤が多くを抱え込んでいる姿を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。