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「男として惚れた」と選手も心酔! クロップ、グアルディオラ、トゥヘル……メガクラブで成功した名将たちに共通する能力とは?
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/11/06 17:00
なぜ彼らは選手の信頼を集め、結果を残すことができるのか。メガクラブを率いる3人に見る名将の条件とは?
イングランド、ブラジル、ポルトガル、スペイン、フランス、ドイツ、ベルギー、アルジェリアなど、シティは多国籍軍である。一方のチェルシーもイングランド、スペイン、ドイツ、ベルギー、セネガル、デンマーク、イタリア、クロアチア、モロッコ、アメリカなど、異なるバックボーンを持つ選手が集結している。ひとつに束ねるのは至難の業だ。
プレミアリーグで勝負しているのだから、多くの選手が英語をマスターしている。
今シーズンからアーセナルでプレーしている冨安健洋も流暢な英語でコミュケーションを図っているようだ。
しかし、なかなか言葉を覚えられず、ミーティングの内容が理解できずに絶望した選手も少なくない。武藤嘉紀(現ヴィッセル神戸)も、ニューカッスルで言葉の壁に苦しんだ。
彼らのコミュニケーション能力こそがクラブの強み
グアルディオラはスペイン語、イタリア語、ドイツ語、英語を巧みに操る。トゥヘルはドイツ語、フランス語、スペイン語、英語が堪能だ。
したがって通訳を介さずに、自らの意思を選手に、スタッフに伝えられる。他意はなくとも、第三者が介入すると意訳され、監督の指示が曲解されるケースもしばしばある。
意思の疎通を図れずに重要な局面を迎えたとしよう。試合は壊れる。
マルチリンガルのグアルディオラとトゥヘルであれば、意思の疎通はスムーズだ。交代選手にベンチ前で、テクニカルエリアで何やら伝えるシーンを毎試合のように見ているが、彼らは通訳を介してない。
基本的に英語しか話せない英国系の監督に比べると、大きなアドバンテージだ。
洋の東西を問わず、かつての監督は大半が上から目線だった。体罰を加えたり、口汚く罵ったり、それが常識とされていた。あまりにも一方的な指導により心を閉ざした選手も少なくない。
しかし、クロップもグアルディオラもトゥヘルも、そして多くの監督、コーチが選手の心に寄り添い、多言語を操り、さらなる可能性を引きだすための努力に日々勤しんでいる。彼らのコミュニケーション能力こそがそれぞれのクラブの強みであり、成功の条件だ。
この先ヨーロッパに渡る日本人選手たちもコミュニケーション能力を磨き、少なくとも英語だけは操れるようになってほしい。