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「延長線上に日本代表がある」中村憲剛が語るフロンターレの“強烈なモチベーション”とは 田中碧と三笘薫が抜けても《J1連覇》
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/11/04 17:02
優勝シャーレを掲げるキャプテンの谷口彰悟。ホーム等々力での優勝決定だけに、選手たちの喜びもひとしおだろう
麻生グラウンドの延長線上に“代表”がある
選手のレベルアップについては、日本代表に選ばれる選手が増えてきたことも関係しているでしょう。
僕はイビチャ・オシムさんが監督になった06年の10月に、初めて日本代表に招集されました。その年の8月にはフロンターレから我那覇和樹が呼ばれたのですが、その瞬間に僕のなかで代表が近くなったのです。「我那覇が見られているなら、同じチームの自分も見られているに違いない」と、モチベーションが上がりました。
21年は谷口彰悟、山根視来、脇坂泰斗、田中碧が日本代表に選ばれ、田中、三笘薫、旗手玲央の3人は東京五輪に出場しました(※注)。そして、10月のカタールW杯アジア最終予選、対オーストラリア戦では守田と田中が先発でプレーしましたが、麻生グラウンドでやっていることの延長線上に日本代表がある、ということが目に見えているのです。選手たちはモチベーションを刺激されるでしょう。頑張らないはずがありません。
(注:4日、田中に続いて三笘と旗手も11月のW杯アジア最終予選に初招集された)
モチベーションアップの材料として、もうひとつはここでの活躍が海外へとつながり始めているというのもあるかもしれません。「フロンターレでポジションをつかみ、高いパフォーマンスを示せば、守田や三笘のように大卒でも海外からオファーが来る」というモデルができたのは大きいでしょう。アカデミー出身の選手では、三好康児、板倉滉、田中がフロンターレでプロデビューを飾り、海外へ移籍しています。「次は自分が」と考えることができます。
海外移籍のモデルができつつある一方で、フロンターレは大卒や高卒でチームの幹として活躍している選手も大切にしています。大卒なら小林悠、谷口、車屋紳太郎、脇坂らが、高卒なら登里享平や大島僚太らが、しっかりとチームに貢献している。長くチームでプレーする選手がいることも、フロンターレの強さを支えているのは間違いありません。
毎年のように主力選手を引き抜かれるのは、クラブからすれば大変だと思います。けれど、主力が海外へ行くことを前提にチームを作っているのでしょうし、フロントと現場の意思疎通がしっかりしていると感じます。
将来性の高い選手が集まり、麻生グラウンドで日々切磋琢磨する。主力に成長した選手は海外へステップアップしていき、その穴を埋めるように新しい選手が育っていく──新しいサイクルが始まっている、と感じます。リーグ戦の残り4試合を引き続き高い基準で戦い、昨年に続いて天皇杯との2冠を達成してほしいです。
<フロンターレ番記者の解説編に続く>
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