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「延長線上に日本代表がある」中村憲剛が語るフロンターレの“強烈なモチベーション”とは 田中碧と三笘薫が抜けても《J1連覇》
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/11/04 17:02
優勝シャーレを掲げるキャプテンの谷口彰悟。ホーム等々力での優勝決定だけに、選手たちの喜びもひとしおだろう
一つひとつを振り返れば、全ての試合で相手を圧倒したわけではありません。むしろ、苦しい試合が多かった。それは、相手がフロンターレをリスペクトして、かなりの熱量で分析・対策してくるからです。ACLに出場したことで日程が過密になる時期があり、コロナ禍でのバブルや隔離もありました。オニさんにも選手にも、精神的な負荷がかかってきたはずです。そう考えると、この成績は本当にすごい。賞賛に値します。
積み重ねた勝利による好循環
オニさんの基準に触れましたが、選手たちの基準も高いのです。
17年に初めてJ1優勝を果たしてから、日常の基準を高めていこうという空気感が生み出され、チームとしても個人としても力をつけてきました。パススピードひとつをとってもこのチームではこれが基準だ、球際やハードワークもこれが基準だというのがあり、在籍期間の長い選手から新たに加わってきた選手へ、日々の練習のなかでフロンターレの「高い基準」が継承されているのでしょう。
17年以降はタイトルを毎シーズン獲っています。言い方を変えれば、自分たちの取り組みが肯定されている。「自分たちがやっていることは優勝につながるんだ、サポーターに喜びをもたらすんだ」と思うことができるわけですから、選手はさらに前向きになれます。
これまで常勝を宿命づけられてきたチームというと、個人的には鹿島アントラーズを思い浮かべますが、勝ち続けているからこそ「常勝」が基準になる。いまのフロンターレは、サポーターもクラブのスタッフも、「優勝しなきゃいけないんだ」と思っている。それは、あと一歩で優勝できなかった当時との明らかな違いです。
そういう目線でスタジアムに来てもらい、応援をしてもらうと、選手の意識は変わっていきます。「自分たちは勝たなければいけない」という言葉が、選手たちから繰り返し聞かれました。
それは、勝ったことがなければ言えないことです。勝つことでチームは強くなり、強くなるからまた勝つ。そうやって考えると、今シーズンのJ1制覇はこれまで積み上げてきた歴史の延長線上にあり、ピッチの内外に優勝の要因があると思います。