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「延長線上に日本代表がある」中村憲剛が語るフロンターレの“強烈なモチベーション”とは 田中碧と三笘薫が抜けても《J1連覇》
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/11/04 17:02
優勝シャーレを掲げるキャプテンの谷口彰悟。ホーム等々力での優勝決定だけに、選手たちの喜びもひとしおだろう
戦い方のベースとして、相手にアプローチさせないぐらいの技術力や、相手の穴へ走っていく爆発的なスプリントなどがあります。パススピードを追求することやハードワークは当然です。そういうものがしっかりとあるなかで戦っているので、対戦相手からすると一瞬たりとも気が抜けないのでは。相当にすり減る感じがあるのだろうな、と想像します。
積み重ねた勝利の数だけでもすごいものがありますが、負けないことも評価したいです。リーグ戦は1敗だけで、ACLはPK負けでした。ルヴァンカップは準々決勝で浦和にアウェイゴールの差で敗退しましたが、2試合とも引き分けでした。メンバー的にも今シーズン一番苦しい時期で、CBを本職とする選手がいないなかでも、浦和に負けなかったのです。
主力流出のダメージを抑えた鬼木監督の手腕
なぜ勝ち続けられるのか。なぜ負けないのか。
チーム内で「オニさん」と呼ばれている鬼木達監督に、まずは触れるべきでしょう。
オニさんは細部にまで徹底的にこだわります。そして、求める基準が相当に高い。僕が現役だった当時から、「自分たちが日本をリードするんだ」と事あるごとに発破をかけていました。高い目線でチーム作りをしているので、選手に求める基準も高くなります。
そのなかで、先を見据えて若い選手も起用していく。ルーキーの橘田健人がポジションをつかんだり、レンタルバック1年目の宮城天が決勝ゴールを決めたりと、若い選手、経験の少ない選手を成長させて、「さあ使えるぞ」と判断したタイミングで使っていると感じます。橘田は大学2年頃から練習に参加していたので、あらかじめフロンターレのサッカーを理解しているところもありました。
目の前の1試合に全力で臨みながら、オニさんはシーズン全体を見据えたマネジメントをしていったのでしょう。だからこそ、シーズン中に主力が海外へ移籍しても、怪我で離脱する選手がいても、チーム力を落とすことなく戦えたのだと思います。選手の入れ替わりがダメージにならなかったのは、間違いなくオニさんの手腕です。オニさんでなければ、ここまでうまくチームをまとめられなかった、と思います。