Jをめぐる冒険BACK NUMBER

J2降格、監督交代・スタイル変更が報われた11年ぶりの戴冠… 《ルヴァン優勝後》こそ問われる名古屋とフィッカデンティ監督の真価
 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

PROFILE

photograph byJ.LEAGUE

posted2021/11/01 11:01

J2降格、監督交代・スタイル変更が報われた11年ぶりの戴冠… 《ルヴァン優勝後》こそ問われる名古屋とフィッカデンティ監督の真価<Number Web> photograph by J.LEAGUE

ルヴァン杯優勝に円陣となって喜びをあらわにするフィッカデンティ監督と名古屋の面々。重要なのは“ここから”だ

J2降格、風間→マッシモ体制でスタイルの大転換

 2016年シーズンに初のJ2降格を経験。風間八宏監督を招聘して1年でJ1に復帰したものの、2年続けて残留争いに巻き込まれた。19年シーズン途中には風間監督が退任し、フィッカデンティ監督が就任。それにともない志向するスタイルが大きく変わった。

 その間、多くの選手がチームを離れ、新たに加入した選手が新しいグランパスを築くべく、もがいてきた。

 だからこそ、中谷の言葉には重みがある。

「2018年に瑞穂(陸上競技場)で残留が決まった瞬間とちょっとダブるところがあって。4年間苦しかったけど、ようやくこういう場所に立てて、タイトルが獲れたのは感慨深いものがあります。すごく苦しい時期が長かった。サポーターのためにタイトルを獲る、という気持ちが自分の中にはあったので、それが達成できてすごく嬉しいです」

 その意味で、風間体制から名古屋を強くするために奮闘してきた丸山祐市と米本拓司が、負傷のためにピッチに立てなかったのは残念だった。

 ただ、試合後のピッチには中谷と抱擁したり、カップを掲げたりする丸山の姿があった。歓喜するゴール裏に向けて吉田豊が掲げたスマートフォンの画面には、米本の姿があった。

 彼らの喜びの表情を確認した名古屋のファン・サポーターは、少し安心したに違いない。

堅守のチームが次の一手に苦しむ、という現象

 気になるのは、名古屋のこれからだ。

 フィッカデンティ監督就任3シーズン目で、レギュラー選手の多くが20代後半から30代前半の選手たち。柿谷やヤクブ・シュヴィルツォクら大型補強を敢行した今シーズンは、ひとつの集大成だった。では、この先はどうするのか。

 守備の堅いチームが次の一手に苦しむのは、よく見られる現象と言える。

 攻守一体は現代サッカーでは当たり前のことだが、「いい守備からいい攻撃へ」と守備から先にチームを作ると手詰まりになるものだ。プレッシングや守備から攻撃へのトランジションのスピード、ハードワークや運動量には限界があるからだ。

 最近ではまさに昨年度のルヴァンカップを制したFC東京が今シーズン、まるで金属疲労を起こしたかのように、ギアが上がらず低迷している。

 名古屋の現状のスタイルをブラッシュアップするだけでは、選手のテンションがもたない。一方、守備に重きを置いてきたチームが攻撃重視に舵を切るのは案外難しい。生命線である守備に綻びが生じやすいからだ。

 それでもバランスの針を攻撃へと傾けるのか、今のスタイルのまま、再び大型補強を敢行するのか、若手を抜擢していくのか……。

 ここで方向性を見誤ると、再びタイトルから見放されてしまう可能性もある。

 タイトルを積み重ねていくために名古屋はどんな強化プランを描くのか。フィッカデンティ監督と強化部の手腕が問われるのは、ここからだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

関連記事

BACK 1 2 3
名古屋グランパス
中谷進之介
マッシモ・フィッカデンティ
柿谷曜一朗
稲垣祥

Jリーグの前後の記事

ページトップ