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J2降格、監督交代・スタイル変更が報われた11年ぶりの戴冠… 《ルヴァン優勝後》こそ問われる名古屋とフィッカデンティ監督の真価
posted2021/11/01 11:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE
気持ちのいい秋晴れと、両チームのゴール裏を彩る鮮やかなコレオグラフィー――。
これぞルヴァンカップ決勝、といった光景で始まった頂上決戦は、名古屋グランパスが2-0でセレッソ大阪を下し、2010年のリーグ優勝以来となる通算4つ目の3大タイトルを手に入れた。
多くの時間帯で相手の攻撃を耐え凌いだ名古屋は、後半開始早々にセットプレーから先制し、試合終盤にカウンターから追加点を奪って突き放した。
キャプテン中谷の言葉が象徴する“筋書きどおり”
「前半はとにかくゼロで抑えて、後半勝負に持っていこうと話し合っていた。ゲームの流れ的には難しくも見える、どうしても堅い試合にはなってしまうので、面白みに欠けたと思いますが、それが僕たちだし、自分たちが築き上げてきた戦い方を今日はできたかなと思っています」
キャプテンの中谷進之介の言葉を聞けば、名古屋の筋書きどおりの展開だったことが分かる。
堅守速攻は名古屋のスタイルであり、そもそもカップ戦のファイナルというのは堅い試合になりがちだ。
25歳のゲームキャプテンは「面白みに欠けた」と語ったが、いやいやどうして。1トップの前田直輝が左右に流れて2列目の飛び出しを促した序盤の攻撃は迫力があったし、先制点を生んだコーナーキック――ニアで柿谷曜一朗がスラしてファーに前田が飛び込む――はデザインされた見事なセットプレーだった。
そして何より、長澤和輝と齋藤学を投入して4-2-3-1から4-3-3へ、ボランチの木本恭生を最終ラインに下げて5-4-1へ、木本の負傷とダメ押し点を受けて5-3-2へ、戦況や相手の交代策に応じたベンチワークとそれに応えた選手たちの対応力は素晴らしかった。
MVP稲垣は守備職人から総合力の高いMFに変貌
大会MVPに稲垣祥が選出されたことに、異論を唱える者はいないだろう。
現場で取材する記者の一部には投票用紙が配布されていて、試合終了10分前に提出する仕組みとなっている。
決勝のスコアが1-0のままなら、優勝を決めるゴールを奪った選手を選ばないわけにはいかないため、前田の名前を書き込んでいたが、係員が回収しに来る直前の79分に稲垣のゴールが生まれたため、慌てて「稲垣祥」と書き直した。