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羽生善治は「847」 大山康晴は「652」…では藤井聡太19歳は? 谷川浩司が注目する《名棋士と勝ち越し数とタイトル数》の関係 

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谷川浩司+大川慎太郎

谷川浩司+大川慎太郎Koji Tanigawa + Shintaro Ohkawa

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photograph by日本将棋連盟

posted2021/10/23 06:00

羽生善治は「847」 大山康晴は「652」…では藤井聡太19歳は? 谷川浩司が注目する《名棋士と勝ち越し数とタイトル数》の関係<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

竜王戦第1局を勝利した藤井聡太三冠。プロとなって以降5年で積み重ねた勝ち越し数に谷川浩司九段も注目している

谷川 棋士生活というのは長く、私も45年ほどになります。若いうちは勝率が高く、期間によっては7~8割ほどあるケースも珍しくはありません。ただ年数を重ねていくと、それほどまで高い勝率は残せず、おのずと勝率は下がっていきます。そんな棋士の実績において、“強さを図る1つの目安”として「勝ち越し数」は信憑性が高いのでは、と考えたのです。

勝ち越し数とタイトル獲得数の順位が一致する

 そこで時代を築いた棋士……大山(康晴)先生、中原誠先生、羽生さんの数字を調べてみたところ――当然のように勝ち越し数が数多くありました。

※編集註:3人の対局成績と通算タイトル獲得数
(羽生九段ら、現役棋士の数字はすべて2021年10月19日時点)
大山康晴:1433勝781敗/勝ち越し数=652 勝率.647/80期
中原誠:1308勝782敗/勝ち越し数=526 勝率.626/64期
羽生善治:1487勝640敗/勝ち越し数=847 勝率.699/99期

 たまたまですが、勝ち越し数とタイトル獲得回数の順位が、羽生さん、大山先生、中原先生と一致したんですね。

 もちろん時代の違いは存在します。例えば大山先生の頃はタイトルが3つでした。昭和20~30年代に現代と同等のタイトル数があれば、大山先生はタイトル100期に達しているのではとも思います。ただ――勝ち越しの数という観点を、気にする人はあまりいないと思うので、ご紹介させていただきました。

大川 メディアでも今まで、その視点はなかった気がします。

藤井さんは毎年のように……

谷川 私自身、最近は負け越すことも増えています。でもなんとか勝ち越しの貯金を減らさずにいたい――というのは目標のひとつではあるんです(※谷川九段は1351勝892敗、勝ち越し数459)。そこから藤井さんについて考えていくと、デビューして4~5年ぐらいで勝ち越しがどんどん伸びていて、なおかつ毎年のように30~50といった数を勝ち越しています(※藤井三冠は247勝46敗、勝ち越し数201)。

大川 それは驚異的ですよね。この間、中村修九段が800勝を達成されたタイミングでお話を聞く機会がありました。その当時、貯金が100付近で“その数字をキープして、できれば引退したいんだ”という風におっしゃっていました。

谷川 若い頃は、年間30勝できる棋士であれば、毎年10~20ほど貯金することができます。ただ、先ほども話した通り、年月を経るごとにその貯金が徐々に減っていきます。中村九段は私と同じ昭和37年生まれですし、そう考えるのはよくわかるんですよね。それぞれが目標を持って現役を続けていくのは大事かなと思っています。

<タイトル戦の過密日程・藤井三冠のスター性編に続く>

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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