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羽生さんは別格、では藤井くんは? 中村太地七段が語る将棋の“格”。
posted2020/09/07 11:50
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Tadashi Shirasawa
「藤井四段」だったはずが、あっという間に「藤井六段」である。そして「藤井七段」、「藤井棋聖」、「藤井二冠」に――。
2018年2月17日の朝日杯将棋オープン戦、藤井聡太五段(以下、すべて当時の肩書)は準決勝で羽生善治二冠、決勝で広瀬章人八段に勝利した。
中学生棋士初の棋戦優勝、それによる六段昇格で、「藤井五段」と呼ばれた期間はわずか17日だった。今後、藤井五段と書く機会はそうそうないだろう。
また準々決勝では、佐藤天彦名人にも勝っている。あの29連勝に始まり、名人・永世七冠を立て続けに破る15歳は、どう考えてもマンガ、いやマンガでも“毎回最終回かよ”レベルだ。
AbemaTVの検討ルームでは、「羽生さん、倒しに来ているな」という声が挙がるほど、羽生二冠も全力でぶつかっていた。にもかかわらず藤井五段は終盤で押しきった。画面越しからも、プレッシャーとは無縁、といった風格すら感じた。
対局相手としての羽生さん、藤井くん。
風格、その言葉でふと考えた。
数十センチの盤面をはさんで戦う将棋。
とてつもないスピードで未来を読む達人であるとともに、棋士もまた人間である。対局相手は何か影響を受けるのか。つまり、いわゆる“格”や“威圧感”というものを感じるのか。
そんな素朴な疑問に、対局を解説していた中村太地王座が答えてくれた。昨年は羽生二冠、藤井六段のどちらとも盤を挟んでいる(後者は非公式戦)。
羽生二冠との対局は王座戦で、勝利して自身初のタイトルを獲得した。中村王座自身が棋士の頂点に立つ1人であり、向き合った2人の強さも知っている。だからこそ、その辺りの心理面を聞いてみたかった。
「対局者の視点で、羽生さんや藤井くんってどう見えているんですか?」と。