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《10月22日で48歳》平成の怪物・MLB名将・古畑任三郎・智弁和歌山…イチローに魅せられた男たち「ありがとう、君のおかげだ」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/10/22 06:02
2019年3月27日、引退会見でのイチロー。これからもその功績は語り継がれていくだろう
<名言5>
ありがとう、君のおかげだ。
(王貞治/Number751号 2010年4月1日発売)
これまでアマチュア主体で開催されていた野球のワールドカップとは異なり、世界の“プロ野球選手”が集って世界一を決める大会として開催されたのが、ワールドベースボールクラシック、通称「WBC」だ。その第1回で見事に優勝を果たしたのが2006年のこと。
結果としてアメリカやドミニカ、プエルトリコには主力級のメジャーリーガーが集結したが、当初は大会初開催とあってチーム事情から参加を保留する選手も少なくなかった。
しかし、すでにシアトル・マリナーズでその存在感を十分に発揮していたイチローは、真っ先に日の丸を背負うことを決める。チームの春キャンプには参加せず、日本国内で調整を続けて代表合宿に参加する力の入れっぷり。会見でも「向こう30年、日本にはちょっと手が出せないみたいな、そんな感じで勝ちたい」と意気込むなど、WBCに懸ける思いがヒシヒシと伝わる言動だった。
だが、大会が始まると期待されたような打撃は鳴りを潜めた。アジア人投手のタイミングに苦労したのか、本調子とは程遠い出来が続き、特に第1、第2ラウンドでともに韓国に敗れるなど、世界一へ向けて暗雲が立ち込めていた。
それでも薄氷を踏む思いで準決勝に進んだ日本は、準決勝で再び宿敵・韓国と対戦。ここで本領発揮したのがイチローだった。
この大会で初めて3番に入ったイチローは猛打賞の活躍でリベンジに貢献。自身でも「最高の試合」と語った勢いそのまま、決勝でもキューバ戦を破って世界一の称号を手に入れた。
当時はまだ少なかったメジャーリーガーとして、プレー、言葉で侍ジャパンを牽引したイチローを王監督は、実にシンプルな言葉で労った。
古畑vs.イチロー
<名言6>
僕のイメージの中にイチローさんが言いそうなこと、やりそうなことをインプットした上で、“殺人者イチロー”を作っていったんです。
(脚本家・三谷幸喜/Number836号 2013年9月5日発売)
◇解説◇
2006年1月に放送されたドラマ『古畑任三郎ファイナル』に、イチローは犯人役で出演した。イチローはほとんどの回のセリフを記憶するほどこのドラマの大ファンで、内容の矛盾を指摘して三谷氏のことを驚かせたこともあったという。
イチローの役柄は「イチロー」。本人役を演じるというプランはイチロー自身が強く提案したというが、三谷氏は「殺人者ではあるんだけど、事件そのものはイチローさんの方に理があるというふうにしたかった。そこから逆算して、『フェアな殺人者』というタイトルになりました」と、その内幕を振り返った。
イチローはこのドラマに出演するにあたり、こんなことも言っていた。
「自分がこういうドラマに出れば、世間はおそらく『イチロー、浮かれているな』と思うはずです。だからこそ、自分は本業で今年はもっと頑張らないといけないんです」
その覚悟を知った三谷氏も「絶対に後悔させたくなかった」と『古畑』とのやりとりを想像しながら物語を作り上げていった。
現役アスリートがテレビドラマに本人役で、しかも犯人役で登場することは、後にも先にも画期的なことである。ちなみにイチロー出演回の視聴率は27%を記録している。