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ネイマールの「唐突すぎる代表引退宣言」に思う“フットボールの多様性”とは 《毒を併せ持つ賛否両論のスター》だからこそ…
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/10/20 11:02
ロシアW杯でのネイマール。カタール大会が本当に“最後のW杯”となるのだろうか
ネイマールがブラジル代表にとって重要な選手であるのは間違いない。しかし、一人だけ守備を免除されることの弊害があり、いない方がチームがまとまることもある。彼の起用は、両刃の剣なのである。
魅力的なプレーと笑顔と毒を併せ持つからこそ
今後の焦点は、ネイマールの今季と来季のクラブと代表でのプレー内容、そして来年のW杯での出来だ。PSGに欧州CL初優勝をもたらしたり、W杯で獅子奮迅の働きを演じてブラジルを世界の頂点に導いたら、「まだ代表から引退しないでくれ」という声が殺到するはず(それこそ、ネイマールが望むことだろう)。しかし、もしクラブでも代表でも不調で、W杯でまた優勝を逃したら、彼の代表引退を惜しむ声は霧散するのではないか。
筆者は、近年のネイマールを取り巻く状況と本人の心身のコンディションからみて、今後、彼のパフォーマンスは緩やかな下降線を辿る可能性が高いと考えている。
その一方で、彼の魅力的なプレーとあの輝くような笑顔をもっともっと見たい、という気持ちも強い。
ネイマールは、ペレ、ジーコ、クリスティアーノ・ロナウド、メッシら「天分に胡坐をかかず、真摯に努力するアスリート」ではなく、ガリンシャ、マラドーナ、ロマーリオ、ロナウジーニョ、イブラヒモビッチら「毒も併せ持つトリックスター」の系譜に連なる。このような選手がいることも、世界のフットボールが“多様性”を保つうえで重要なのかもしれない。
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