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メッシ“34歳初タイトル”にネイマールが号泣のち抱き合いキス 「また一緒にCLで」「負けたのは悔しいけど…」10年超の友情が泣ける
posted2021/07/12 17:04
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
AFP/AFLO
後半49分54秒。主審が試合終了のホイッスルを吹くと、アルゼンチンの小さな背番号10はピッチに跪き、両手で顔を覆った。チームメイトが一斉に駆け寄り、固く抱き締める。それは、この試合の殊勲者でこそなかったが、彼がチームのシンボルであり、最大の誇りだからだ。
やがて胴上げが始まった。飛びっきりの笑顔を浮かべ、5回、6回と宙に舞う。そして、これまで自分を信頼し続けてくれたリオネル・スカローニ監督と、まるで恋人同士のように熱く抱き合った。
メッシにとっての“10度目の正直”
アルゼンチンにとって、1993年以来、実に28年ぶりのタイトル。2005年に代表デビューしたメッシにとっても、16年目にして初の戴冠。ワールドカップ(W杯)4大会、コパ・アメリカ(南米選手権)5大会で無念の涙を流し続けた末の、"10度目の正直"だった。
2016年にはアメリカで行なわれたコパ・アメリカ100周年記念大会の決勝で、2015年大会と同様、チリと対戦。0-0で、延長を経てPK戦による決着となり、最初のキッカーを務めたが失敗。またしても優勝を逃した。この敗戦のショックは大きく、沈鬱な表情で「もう代表ではプレーしない」と語った。
しかし国中から「レオ、辞めないで」という声が沸き起こり、2カ月後に翻意した。それでも、2018年W杯はラウンド16で敗退し、2019年のコパ・アメリカでは決勝で宿敵ブラジルに完敗。国内では「クラブでは世界最高の選手だが、代表では別人」という声が少なくなかった。それだけに、敵地で宿敵を倒してのタイトルの喜びは格別だったに違いない。
一方、髪を銀色に染めたブラジルの背番号10は、ピッチのほぼ反対側で涙を流した。歓喜するアルゼンチン選手の群れを、うつろな目で眺める。やがて、おもむろにアルゼンチン選手の方へ歩き出した。