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ネイマールの「唐突すぎる代表引退宣言」に思う“フットボールの多様性”とは 《毒を併せ持つ賛否両論のスター》だからこそ…
posted2021/10/20 11:02
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
「来年のカタール大会は、僕にとって最後のワールドカップ(W杯)になると思う。
自分としては、最後のW杯のつもりで臨む。なぜなら、その後、僕がメンタルの部分でフットボールに耐えられるかどうかわからないから。
来年のW杯で優勝するため、僕は全力を尽くす。子供の頃からの最大の夢を実現するためにね」
DAZN制作のドキュメンタリー「ネイマール : ブラジル代表 王者の系譜」でブラジル代表のエースが発したコメントは、世界中のメディアとファンに衝撃を与えた。
2010年W杯後に初招集され、以来10年以上、ブラジル代表の攻撃を牽引してきた。現在29歳で、来年のW杯時で30歳。2026年大会に出場すれば34歳だが、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドは37歳、アルゼンチン代表メッシは35歳で来年のW杯を迎える。今、この時点でネイマールの“代表引退宣言”を予想した人はほとんどいなかったはずだ。
爆弾発言を盟友チアゴ・シウバらは擁護した
注目すべきなのは、「メンタルの部分でフットボールに耐えられるかどうかわからない」というくだり。精神的に追い詰められていることが窺われ、代表のみならず、近い将来の現役引退を考えているとも受け取れる。
この爆弾発言は、各地で様々な反応を巻き起こした。
かつてパリ・サンジェルマン(PSG)で一緒にプレーし、現在もブラジル代表の同僚で親交のあるCBチアゴ・シウバ(チェルシー)はネイマール擁護派の筆頭だ。
「彼がピッチの上で成し遂げてきたことを忘れ、些細なことをあげつらう人がいる。彼らが、ネイマールを苦しめている。ネイマールには、プレーする喜びを忘れてほしくない。飛び抜けた才能の持ち主なのだから、好きなようにプレーすればいい。それがブラジル代表のためにもなる」
「君が天国でプレーするなら僕も…」
やはり代表のチームメイトであるMFフレッジ(マンチェスター・ユナイテッド)も、ネイマールの翻意を願う。
「ネイマールには、まだあと何年も代表にいてほしい。選手には大きな重圧がかかるものだが、代表は彼を必要としている。ブラジルのフットボール史上最高の選手の一人なのだから」
元ブラジル代表FWで、現在は解説者を務めるカイオ・リベイロもこう語る。