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中田翔の獲得? 坂本勇人の交代? 意見飛び交う「巨人が9月以降に大失速」の原因だが…本当に痛かったチーム編成の“欠陥”とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/10/16 11:04
今季、32試合連続無失点記録を樹立したビエイラだが、9月以降は打ち込まれることが多くなった
原監督がいち早く攻撃的2番打者を採用したのも、そうした昨今の野球に即したチーム作りを目指したものだった。もちろん投手陣の整備をして、打線もしっかり打てるというのは理想であり、そういうチームを目指してはいる。ただ、投手陣の整備を最優先して2番につなぎの打者を起用して2、3点を守り切るという野球では勝てなくなっている。極端に言えば投手陣で1人か2人の柱になる投手がいれば、あとはオープナー的な投手でもいい。その代わりリリーフ陣をしっかり作って、勝てる試合をしっかり勝ち切る野球をする。それが原監督が復帰してからの巨人のゲームプランだった。
このゲームプランで肝要なのは先発投手がある程度の失点をしても、それを中盤までに跳ね返せる打力があること。そして7回までにリードを奪った試合は、確実に逃げ切れるリリーフ陣を作り上げることだった。
実際に4年連続でペナントから見放されていたチームが、原監督の復帰1年目の2019年に優勝できた要因は、シーズン途中でルビー・デラロサ投手を獲得し、そのデラロサと中川皓太投手、澤村拓一投手らのリリーフ陣で7回からの主導権を握れたことだった。
そして今年の大失速の1つのきっかけは、実は9月9日のビエイラの離脱だった。
流れがプツンと途切れた9月2日のヤクルト戦
今季も当初は昨年同様にデラロサをクローザーで起用する方針でチームはスタートを切った。ところが4月15日にはデラロサが米国の市民権獲得の手続きのために一時帰国。約1カ月後に再合流したが、調整不足などもあり、昨年までの絶対的な投球内容が見せることができなかった。その中で6月になるとビエイラがクローザーとして力を発揮し出して、それと軌を一にした形でとチーム成績も上昇していった。
結果的にビエイラは5月3日の広島戦から9月1日のヤクルト戦まで32試合連続無失点記録を樹立し、その間に15セーブをマーク。チームも6月から8月までの間は25勝18敗5分けと7つの勝ち越しを記録して首位にも立っている。
しかしそんな流れがプツンと途切れたのが9月2日のヤクルト戦でビエイラが33試合ぶりの失点を記録してからだ。その後も4日の阪神戦でも大山悠輔内野手の逆転サヨナラ2ランを浴び敗戦投手となった。そうして9日には肘のコンディション不良で一軍登録を抹消されたのである。