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ベイスターズが久々に高校生投手・小園健太を1巡目指名したワケ…進藤達哉編成部長が明かす新ドラフト戦略
posted2021/10/17 11:02
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Sankei Shimbun
「久しぶりに感動したというか、本当によく引き当ててくれたなって。嬉しかったですね」
横浜DeNAベイスターズの編成部長である進藤達哉は、高揚感を漂わせ感慨深い表情でそう語った。現役時代から冷静沈着な人物として知られる進藤が、これほど声を弾ませるのは珍しいことだ。
10月11日に開催された2021年度のドラフト会議。DeNAは1巡目に阪神との競合の末、目玉投手であった小園健太(市和歌山高)の交渉権を手に入れた。クジを引いたのは初のドラフト会議参加となった三浦大輔監督。交渉権獲得の瞬間、ファンや関係者が歓喜したことはもちろん、DeNA首脳陣が陣取る控室は瞬間的に熱気を帯びた。1年間の苦労が、ひとつ報われた瞬間でもあった。
「ドラフト会議はスカウトたちの苦労も含め、多くの人たちの想いが集約されているのですが、三浦監督自身そういうものを感じてくれて、願掛けまでいって抽選に挑んでくれました」
DeNA体制となって今年で10年目、ドラフト会議において1巡目で競合必至の高校生投手を指名したのは、13年の松井裕樹(現・楽天)以来久々のことだ。ドラフト前の編成会議で最優先事項になっていたのは“将来性豊かなピッチャー”。もちろん他の1巡目指名候補もおり激しい議論が交わされたが、小園を指名することを最終的に決めたのはドラフト当日のことだった。
小園健太がナンバーワン評価の理由
「将来的に日本のエースになれる器を持った投手。我われとしては、左右含め小園選手がナンバーワンの評価でしたし、競合になることは間違いありませんでしたが、それでも指名に行く価値はあると考えていました」
150キロを超えるストレートに加え、カットボールなど質の良い変化球の制球も素晴らしい完成度の高い超高校級。これから挑むプロという舞台を鑑み、進藤は小園のピッチャーとしての特性を次のように評価した。
「投げるボールはもちろん素晴らしいのですが、なによりも投球テンポがいいことが彼の特徴です。つまりゲームを支配することのできるピッチャーであり、そのテンポの良さで野手を乗せていくことができる。こういった能力を発揮するには経験が必要なのですが、彼はその才能を持ち合わせており、そこに強く惹かれました」
歴戦の内野手としてピッチャーの背中を見つづけてきた進藤の言葉からは説得力が感じられた。素晴らしいピッチングもさることながら、ゲームを支配し、組み立てる能力。小園には若くして、確実に勝てるピッチャーとしての才覚があると踏んだというわけだ。