球体とリズムBACK NUMBER
「率直に言って、臆病だ」「理解し難い采配」豪州人記者は森保監督の手腕に疑問符…一方、豪代表の強みは“優秀なスタッフ陣”
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byAFLO
posted2021/10/11 17:00
次戦の結果次第で解任が噂される森保監督。豪州人記者も「アジア随一の選手たちの能力が生かされていない」と手厳しい
翻って、現代表には欧州の5大リーグでプレーする選手がほぼいない。フランクフルトのセントラルMFアイディン・フルスティッチと、レアル・ソシエダのGKマシュー・ライアンくらいだが、後者は出番に恵まれていない。15年前のW杯から4回連続で本大会に出場しているものの、特に近年は人材が薄くなっている印象も。そこには構造的な欠陥があると、マッキンタイア記者は言う。
「オーストラリアでは、トップリーグがNSLからAリーグに移行した2004年頃、ユースリーグの整備が数年にわたって取り残され、その間、若年層の選手たちには公式戦が用意されなかった。選手育成にとって非常に重要な時期に、彼らは実戦の機会を失っていたのだ。現代表の選手たちの多くが、この影響を受けている。だから、質が伴わないのは致し方ない」
「フィジカル勝ち」を生む最先端のメソッド
そんな彼らがW杯予選で11連勝の世界記録を打ち立てた。格下の相手が多かったとはいえ、歴とした公式戦には変わりない。
「もちろん選手の奮闘はあるが、代表チームのスタッフが実に優秀なんだ」とマッキンタイア記者は続ける。
「グラハム・アーノルド監督は代表選手としても、指導者としても豊かな経験を備える、情熱的で芯の強い監督だ。ベガルタ仙台(2014年)ではうまくいかなかったが、後に母国でリーグを連覇し、その手腕が評価されて2018年に代表監督に任命された。彼を補佐するのは、かつてアレックス・ファーガソン監督のアシスタントとしてマンチェスター・ユナイテッドの黄金期を支えたレネ・ムーレンステーンだ。さらにフィットネス・コーチを務めるアンドリュー・クラークの存在も大きい」
スポーツ科学の先進国として知られる豪州には、各界の最前線で活躍するフィットネスのエキスパートが多い。そんな国の代表チームでは、最先端の理論とメソッドを利したコンディショニングやトレーニングが行われているという。たしかに前節のオマーン戦では、日本があれほど痛感したフィジカルの状態差が、まったく感じられなかった。いやむしろ、競り合いや競争のシーンでは、豪州人選手が勝つことの方が多かったくらいだ。ホーム扱いの遠隔地、ドーハでの試合だったにもかかわらず。