スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
2年連続最下位→首位、ヤクルトはなぜ強くなった? カギは得失点差「ヤクルトが200点好転のウラで巨人は80点悪化していた」
posted2021/09/29 11:08
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Sankei Shimbun
長年、メジャーリーグ、プロ野球を見てきて実感していることがある。
メジャーであれば162試合、日本であれば143試合を戦う中で、「戦力」という抽象的な概念は、「得失点差」に凝縮されるということだ。
たとえば、2019年のメジャーリーグのアメリカン・リーグの順位表は、とても美しい。15球団の順位がすべて得失点差で並んでいるからだ。
日本時間の9月27日現在、2021年のシーズンも、アメリカン・リーグ中地区は得失点差通り。他の地区を見ても、多少の順位の入れ替わりはあるものの、おおよそ得失点差の通りに並んでいる(例外は激戦の続くアメリカン・リーグ東地区。首位のレイズは揺るがないが、得失点差ではブルージェイズ、レッドソックス、ヤンキースの並びだが、順位表は見事に反対になっている)。
プロ野球の得失点差を見てみると…
メジャーリーグほどの試合数はないものの、日本のプロ野球にも得失点差は順位にしっかりと反映される。今回は、9月27日時点でのセ・リーグの順位表と得点、失点、そして得失点差を見てみよう。
各球団に試合数のバラつきがあるものの、117試合を終えてヤクルトが得失点差+96で断然トップ、これに巨人、阪神が続くという状況になっている。4位以下は日ごとに順位が変わるような状態になっているが、中日、DeNA、広島と勝ち負け、得失点差は似たような数字だ。
レギュラーシーズン残り1カ月を切った時点で、得失点差を見る限り、ヤクルトが優勝にもっとも近い位置にいると見て間違いない。
2年連続最下位のヤクルトはなぜ躍進できた?
2019年、2020年と最下位だったヤクルトが、なぜここまで躍進できたのか?
そのヒントを2020年の得失点差と比較することで得られる。