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2年連続最下位→首位、ヤクルトはなぜ強くなった? カギは得失点差「ヤクルトが200点好転のウラで巨人は80点悪化していた」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2021/09/29 11:08
ヤクルトの村上宗隆(左)は史上最速100号を達成。山田哲人(右)とともにヤクルト打線を支える
2020年のシーズンはコロナ禍の影響もあって交流戦はナシ、120試合に短縮された形で実施された。実は、この120試合に意味があり、今季は現時点で阪神がちょうど120試合、もっとも多い中日が123試合、もっとも少ないヤクルトが117試合で、総得点、総失点を比較するのにちょうどよい。
昨季は、得失点差5位の中日が3位だったが(これは采配と、広いナゴヤドームの「パークファクター」の影響とみる)、得失点差を見る限り、巨人が圧倒的な力を誇っていたことが分かる。
ヤクルトは-121で得失点差でもダントツ最下位だ。しかし、昨年と今季の数字を比較して欲しい。試合数が少ないにもかかわらず、総得点はリーグナンバーワンで昨季に比べて+55点、総失点も160点程度少なくなっている。投打ともに大幅に戦力がアップしているのだ。
昨季は2番青木(出塁率と長打率の総和であるOPSは.981)、3番山田、4番村上(昨季OPS.1.012)の主軸の打席が終わると、ほぼノーチャンスだったが、今季は大幅にグレードアップしていることが分かる。
打率上位に名を連ねる塩見は似たような数字だが、出場試合が43試合から114試合に増えている。そして山田、中村の復活があり、4月下旬から合流したオスナ、サンタナが派手さはないが、しっかりとした数字を残しているのが分かる。
「総失点100点以上減らした」ヤクルト投手陣
投手陣に目を向けてみよう。
総失点を昨季よりも100点以上防いでいる理由として、先発陣、ブルペン共に安定していることが挙げられる。
ヤクルトは正念場と見られていた9月17日からの10連戦を7勝3分けで乗り切った。この間、2度先発したのは高橋と石川だけだ。
その他に、奥川、小川、高梨、原、サイスニードにスアレスと8人の先発を擁している。そしてブルペンにはマクガフ、清水、そして先発から回った田口、今野、星、大下といった面々がそれぞれの「職場」で結果を残している。
豊富な先発の駒と、リリーフ陣の適材適所が躍進の要因だろう。ただ、10連戦では負けパターンの試合がなく、マクガフと清水が大車輪の働きをしていただけに、10月になっての疲労が心配される。これもまた、うれしい悲鳴だ。
阪神は佐藤輝明の復活がカギ
さて、追う恰好となった阪神と巨人だが、阪神は得失点差で分かるように、際どい試合をモノにして貯金を作ってきた。