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「同級生の“先生のモノマネ”って面白かったですよね?」 フロンターレ名物・集客企画の担当者が「身内ネタ」感を大切にするワケ
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/09/26 06:00
川崎フロンターレの等々力開催と言えば、面白さ満点の企画。集客プロモ担当の人にその発想力の源を聞いてみた
ところが、その状況が2020年の新型コロナウイルス感染拡大により一変。
再開後は無観客試合となり、有観客でも上限数5000人の制限がかかった。チケットは熱心なサポーターの間でも争奪戦となり続けている。この現状は2021年になっても変わっていない。運営する側としても、その影響は大きかったと佐藤は言う。
「もともとプロモーションは、チケットを売るためにサッカー以外のところから注目してもらおうと思って始めたものでもあります。逆に今は5000人限定となり、後援会会員でもチケットが買えない。じゃあ、何のためにイベントをやるのか。そこを考えなくてはいけなくなりました」
集客のための企画を打ち出さなくても、観戦チケット5000枚は当然のように完売する。実際、発売日にはチケット争奪戦に参加したサポーターの悲喜こもごもがネット上であふれている。ピッチに目をやれば、チームはJリーグの負けなし記録を塗り替えるほどの強さを見せ、シーズン序盤から現在も首位を走り続けている。クラブがあぐらをかくつもりはなくとも、J王者のホームゲームのチケットはプラチナ化していく一方だった。
“チケットがプラチナ化”したことでのもどかしさ
そんな中、6月からしばらくホームゲームの開催がなくなった。
サポーターと温度を共有し、その距離感を大事にしているクラブにとっては、実にもどかしい期間となった。かといって、アウェイツアーが開催できるかというと、それも軒並み中止になった。
例えば8月の夏休み期間。
アウェイの柏レイソル戦では、とあるテーマパークで1日遊び、夜は大ホールにある巨大スクリーンで試合観戦を行う企画を進めていた。試合前には、両クラブに在籍経験のある狩野健太さん(スクール・普及コーチ)にトークショー&抽選会をしてもらう予定だった。しかし緊急事態宣言の延長により、企画は中止となっている。
こうした状況下で集客イベントやプロモーション活動をやっていく意味とは何なのか。クラブとしても、あらためて向き合っていくべき機会となったと佐藤は話す。
「その中で、フロンターレの色、らしさを出していくにはどうするのか、ですよね。イベントだけではなく地域との繋がり、サッカークラブらしからぬ仕掛けをやっていく。やっぱりサポーターや地域の方にフロンターレが他人事になって欲しくないんです」
「身内ネタって悪い意味じゃないですか。でも」
ここで佐藤が、ニヤリとしてこんなフレーズを付け加えた。
「僕は『身内ネタ』を大事にしようと思っているんです」