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《なぜアーセナルは冨安健洋を約30億円で獲得したか》現地イギリス記者の本音は?「トッテナムもトミヤス獲得に本気だったよ」
text by
ベン・メイブリーBen Mabley
photograph byGetty Images
posted2021/09/11 17:00
冨安のアーセナル初トレーニングでの一幕。同じく新加入のタバレスにおんぶされる
TDのエドゥが「右サイドバックとして獲った」と公言していますし、アルテタも「彼は4バックのどこでもこなせるが、右サイドバックで違いをもたらす選手」と話しています。
アーセナルは今夏、右サイドバックのベジェリン(→レアル・べティス)を放出しましたし、他候補のセドリクやチェンバーズも評価は決して高くない。ですからレギュラーのつもりで獲ったのは間違いないと思います。
特にアルテタは右サイドバック選考にあたって、空中戦の強さ(高さ)を重視していて、それで188cmの冨安を熱望したようです。
また、アルテタは3バックと4バックを併用します。4バックの場合、左サイドバックにはティアニーというスコットランド代表選手がいて、豊富な運動量と鋭いクロスで、攻撃面で大きく期待できます。そのため右サイドにはより守備的な選手を置き、攻撃時には可変的に3バックに変更。センターバック2枚+右サイドバックの冨安選手がスライドして最終ラインを形成する。それができる守備的なタイプがまさに冨安だったということでしょう。
トッテナム番記者も「トミヤスってどうなの?」
現地イギリス人記者の評価ですが、“ほとんどの記者がトミヤスを知らない”というのが現状です。セリエAに注目しているイギリス人記者でもボローニャの試合はほとんど見ていませんから。向こうのジャーナリストが「トミヤスってどんな選手なの?」と私に問い合わせをしてくるくらいですからね。「ベルギーでもすぐにフィットした。高さもあるし、体も強い。スピードもある。言語が話せない国でも最初から活躍していたのが印象的だったよ。その後は日本代表にも定着しているしね」と私は説明しています。
じつは8月上旬にアーセナルの北ロンドンのライバル、スパーズ(トッテナム)の番記者からも連絡がありました。やはり「ボローニャのトミヤスってどうなの?」という内容でした。「トッテナムが真剣に獲得に動いているようだから……」と。噂にもなっていましたが、スパーズも本気で獲得を検討していたようです。結局、タンガンガという若手の選手が戦力として見込めると踏んだようでチーム事情が変わった。そのため、冨安の獲得は見送ったようですが、チームとして彼の実力を認めていたのは間違いないでしょう。
ロンドンのグーナー(アーセナルファン)の反応ですが、記者と同じくまだ“様子見”段階ですね。「今夏は右サイドバックの補強が必要だ!」というのはグーナーのなかでも一致した意見でしたが、ネームバリュー的にはよく知らない選手がやってきて「誰も獲らないよりはマシかな……」「アーセナル全体の補強として、これで大丈夫なの?」という雰囲気があることは否めません。冨安選手には実力を発揮してもらい、ぜひその活躍で“獲得が正しかった”と証明していって欲しいですね。