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シュワンツ、ロッシ、マルケス…王者の必須テク“ハードブレーキ”を武器に、クアルタラロが狙うフランス人初の最高峰クラス王座
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2021/09/02 17:01
2015年にMoto3にフル参戦して以来、数々の最年少記録を塗り替え、MotoGP3年目の今季、王座を狙う位置につけるクアルタラロ
「ミツオ、ストレートでついていけるバイクをつくってくれ。あとはオレがなんとかする」
その言葉の意味は、ストレートで抜けなくても、だれにも負けないハードブレーキングとライディングテクニックでなんとか勝負する。それができるライダーだということだ。
クアルタラロを待ち受ける重圧
伝説的な名ライダーの系譜に連なる才能を持つクアルタラロは、今年12戦を終えて5勝を挙げている。ドゥカティで総合5位のジャック・ミラーが2勝(ミラーも今季腕上がりの手術を受けている)で続き、あとは、マーベリック・ビニャーレス(現在ヤマハと契約を解消して出場せず)、ミゲール・オリベイラ、マルク・マルケス、ホルヘ・マルティン、ブラッド・ビンダーが1勝ずつで、計7人のウイナーが誕生している。メーカーでは、ヤマハ、ドゥカティ、KTM、ホンダの4メーカーが優勝しているが、クアルタラロの5勝8回の表彰台獲得という安定した走りはライバルを圧倒している。
クアルタラロは、1999年4月20日生まれの22歳。MotoGPクラスにデビューした2019年は、マルク・マルケスの持つ20歳62日の史上最年少PP記録を20歳14日でブレイク。その後、マルケスの持つ史上最年少優勝記録はブレイクできなかったが、マルク・マルケスに続く大物ライダーとして注目を集めた。そして3年目の今年は、バレンティーノ・ロッシに代わってヤマハワークス入りを果たし、その重責を見事に果たしている。
「いまはまだタイトル争いは考えたくない。とにかく優勝したい。表彰台に立ちたいという気持ちでレースに挑みたい」
今季5勝目を挙げたイギリスGPでもイチバン人気だったクアルタラロ。フランス人初の最高峰クラス制覇に向けて、これからますます注目を集めることになる。そして、初めて経験するチャンピオン争いのプレッシャーとの戦いが待ち受ける。そのプレッシャーを跳ね返せるかどうかは、ハードブレーキングにかかっている。