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15歳の王貞治や原辰徳、KKに松井秀喜や清宮幸太郎…「1年生の活躍」は夏の甲子園を彩る華だが、見守る配慮も心の片隅に 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKatsuro Okazawa/AFLO,Hideki Sugiyama

posted2021/08/14 17:01

15歳の王貞治や原辰徳、KKに松井秀喜や清宮幸太郎…「1年生の活躍」は夏の甲子園を彩る華だが、見守る配慮も心の片隅に<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa/AFLO,Hideki Sugiyama

PL学園・桑田真澄と早実・清宮幸太郎の1年の頃。昭和と平成で大きなブームを巻き起こした

大ちゃんフィーバーのち、KKコンビの登場

 1980年夏の甲子園は「大ちゃんフィーバー」に湧いた。早稲田実の1年生エース、荒木大輔が1回戦の大阪・北陽高戦からほぼ1人で投げぬき、決勝まで進出。決勝ではエース愛甲猛を擁する横浜高に4-6で惜敗したが、端正なルックスで、野球ファンのみならず全国的な人気となった。

 なお「高校球児のアイドル化」は、荒木大輔から始まったと言われる。ちなみにこの年9月13日に生まれた松坂大輔は、荒木にあやかって「大輔」と命名されたという。

 1983年夏の甲子園では、PL学園の桑田真澄、清原和博の「1年生コンビ」が注目を集めた。高校野球ファンが衝撃を受けたのは、夏春連覇中で「高校野球史上最強」の評判も高かった徳島・池田高に桑田、清原のPL学園が、準決勝で7-0と圧勝したことだ。

 桑田真澄は池田のエース水野雄仁と投げ合い、5安打完封。余勢をかって決勝の横浜戦も3-0で勝利した。一方の清原はこの試合で甲子園で初ホームラン。桑田、清原は「KKコンビ」と言われ、春夏の甲子園に5回出場、桑田は戦後の高校野球最多の20勝、清原は史上最多の13本塁打を記録した。

松井や清宮ら甲子園を揺るがしたスラッガー

 1990年夏には、星稜の松井秀喜が「恐怖の1年生4番」として注目を集めた。三塁を守っていた松井は、地方大会でも大活躍。甲子園でも期待されたが初戦の日大鶴ケ丘戦は3打数無安打に終わりチームも敗退。しかし大飛球を打って片りんを見せた。2年後の夏の甲子園、明徳義塾戦で、球史に残る「5打席連続敬遠事件」が起こるのだ。

 2005年夏、大阪桐蔭の5番一塁手は1年生の中田翔。初戦の春日部共栄戦では5打数4安打3打点、7回には決勝のホームラン。さらに5回途中からマウンドにも上がり剛速球をみせつけた。大阪桐蔭は準決勝まで進み、田中将大がエースの駒大苫小牧に敗退したが、中田は5試合すべてで安打を打ち、5打点。一躍有望選手として注目されるようになった。

 2015年夏は、早稲田実の清宮幸太郎が「スーパー1年生」として注目を集めた。

 清宮は前年、「東京北砂リーグ」でリトルリーグ世界大会優勝。入学前から注目されていたが、3回戦の東海大甲府戦、準々決勝の九州国際大付戦で2試合連続本塁打。5試合で19打数9安打2本塁打8打点の活躍。1年夏に1大会2本塁打を打ったのは1983年夏、PL学園の桑田真澄と、この年の清宮だけだった。

 こうしてみると「栴檀は双葉より芳し」で、1年生で注目された選手は、全員成功しているような印象があるが、そうとも言い切れない。

【次ページ】 1年生で輝いた“バンビ”が味わった重圧

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王貞治
桑田真澄
清原和博
清宮幸太郎
早稲田実業高校
PL学園高校
中田翔
松井秀喜
星稜高校
大阪桐蔭高校
荒木大輔
原辰徳
東海大相模高校
坂本佳一
横浜高校
緒方漣

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