ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER

<東京五輪>オシムが語った日本対スペインの論点「日本は簡単にボールを失い、それぞれがひとりでプレーした」 

text by

田村修一

田村修一Shuichi Tamura

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2021/08/06 16:45

<東京五輪>オシムが語った日本対スペインの論点「日本は簡単にボールを失い、それぞれがひとりでプレーした」<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

2007年、日本代表監督時代のオシム

「ああ、難しい試合だった。だが私が思うには、日本はボールを失い過ぎた。それにチームが疲れている印象も受けた。野心を抱かずにプレーをしていた。メディアにとってスペイン戦は晴れの舞台なのだろうが、日本が100%の力でプレーしているようには見えなかった。それぞれが自分のためにプレーし、ひとりでトライしようとした。誰もがボールを保持して走るばかりだった」

――攻撃はそうだったかも知れません。

スペインは野心を前面に出した

「本当に簡単にボールを失ったし、それぞれがひとりでプレーした。だがそれではうまくいかず、その後、チームメイトと連携しようとしたが遅すぎた。

 結果は妥当だった。スペインの方が強く勝利を望んでいたからだ。彼らが示したのは、ベスト4にはそれだけの価値があるということだ。野心を前面に出したのは日本ではなくスペインだった。

 日本もプレーができることは示し、ボールをキープして連携を深めようともしたが、あまりにひとりでプレーしすぎた。あんなふうに個人プレーに走れば、コントロールとキープだけなら容易にできる。その結果、最後にあんな形で負けて何も得られなかった。相手の方が優れていたわけではなかった。ただ彼らはずっとシンプルでよりダイレクトだった。

 疲労はあったにせよ、フィジカルは問題なかった。よく走ったしコンビネーションも悪くなかった。そのうえ少なくともトライはした。それがときに見るに値するものを生む。ワンタッチのダイレクトプレーは素晴らしく、そこから仕掛けようとしていた。だがゴール前でアグレッシブではなかった」

――そうかも知れません。

「得点したい意欲が感じられなかった。酒井宏樹は存在感を示して、シュートにもプレーにも積極性があったが、彼にしろ自分のことしか考えていなかった。何かを成し遂げたい、ゴールを決めたいと……。

 勝って決勝進出を祝いたい気持ちは私も理解できる。名誉ある大会だし、そこで栄誉を得るためには何かをしなければならない。試合に勝つことも必要だ。スペインは簡単な敵ではない」

――とても難しいです。

「スペインという名前だけで、すでに何かを表している。彼らは存在感を示し、日本にプレッシャーをかけてきた。サッカーがNo.1スポーツであるスペインという国の代表であることを示すために。そして試合に勝てば、彼らにもプレミアリーグなどのビッグクラブへの道が開ける。プレミアやラ・リーガは、形を変えたワールドカップともいえる存在だ」

【続きを読む】オシムが語った東京五輪U-24日本代表の論点「日本もスペインと同じものを持っている。だが残念なことに、いく人かの選手が…」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

関連記事

BACK 1 2
イビチャ・オシム
酒井宏樹
東京五輪
オリンピック・パラリンピック

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ