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「メカニックを最低限、戦える状態にできた」侍ジャパンの“切り札”千賀滉大は、なぜ見事に復活できたのか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/03 11:30
2回5奪三振の快投を見せた千賀
「自分の中では真っ直ぐもそうですし、変化球もそうですし、バッターから離れた場所での変化が多かった。だから見切られたり、対応されたりが多かったんです」
千賀の不振の分析だ。
なぜ復活できたのか?
そこでこの間、ずっとその部分を修正してきた。
「メカニックです」
こう千賀が語った変更点とは原点回帰──より高みを目指して取り組んでいたフォームを一度止めて、昔の投げ方に返ることだった。
「自分の中で戦える状態に変えたというところです。最低限、これをしないと抑えられないという部分は自分の中で把握しているつもりなので、そこの自分の中でのメカニックを最低限、戦える状態にできた。常日頃からそういうことばかりを考えていますし、とにかくそれがここで出て良かったなという風に思います」
チームが勝つために自分に何ができるのか? 不振に喘ぐ中で必死に模索し、その道を探った決断はしっかり結果として実を結んだ。
「心を整えていけたかなと思います」
「(リリーフは)気持ちの作り方だけだと思った。すごい大事なイニングというのを自分の中で唱えていきながらマウンドに上がったところもあったので、いい経験をさせてもらった結果、こういう風に心を整えていけたかなと思います」
全ての困難を乗り越えたからこそ、千賀には再び、どんな場面でも動かない、どっしりとした心が戻ってきていた。
「(オープニングラウンドの)この2試合の中で投げてもらうシチュエーションがなかった。今日はどこかでチャンスがあれば投げてもらおうというプランを立てていました。その中であそこの2回、しっかり千賀投手らしいピッチングができたということは次につながるかなと思っています」
こう語ったのは稲葉篤紀監督だ。
宿敵・韓国相手となった4日の準決勝は開幕を任された山本由伸投手(オリックス)が先発。ただ、継投の勝負になるのは確実で、そこにこの千賀という切り札が帰ってきたのだ。
悲願の金メダルまで残り2試合。この右腕がフル稼働できれば、夢は現実のものとなる。