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「メカニックを最低限、戦える状態にできた」侍ジャパンの“切り札”千賀滉大は、なぜ見事に復活できたのか?
posted2021/08/03 11:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
JIJI PRESS
タイブレークの末の延長10回の劇的なサヨナラ勝利。ドラマチックな展開で日本がアメリカを撃破して準決勝へと名乗りを上げた。
開幕のドミニカ共和国戦に続いて、またも苦しい展開だった。
前半の打ち合いで1点を追う展開となった試合は、9回1死一、三塁から柳田悠岐外野手(ソフトバンク)の内野ゴロの間に追いつき、試合は無死一、二塁から始まるタイブレークに突入。
表のアメリカの攻撃を栗林良吏投手(広島)が0点で凌いだ裏の日本の攻撃は、送りバントで1死二、三塁とするとアメリカのマイク・ソーシア監督は中堅手を内野に移動させて内野5人シフトを敢行。しかしその策を嘲笑うように、9番・甲斐拓也捕手(ソフトバンク)が初球を誰もいない右翼へと弾き返して日本が勝利を収めた。
千賀が見せた圧巻の奪三振ショー
あまりに劇的な展開での準決勝進出。しかしこのドラマのお膳立てをしたのは、代表入りして以来苦しんで苦しみ抜いた1人の投手のピッチングだった。
5対6と1点を追う6回のアメリカの攻撃。ブルペンからリリーフカーに乗ってグラウンドにやってきたのは千賀滉大投手(ソフトバンク)だった。
いきなり圧巻の奪三振ショー。この回先頭の9番、N・アレン内野手をフォークで空振り三振に仕留めると、1番のJ・ウエストブルック外野手を外角のスライダーで、そして2番のE・アルバレス内野手はインハイの真っ直ぐでいずれも空振り三振に切ってとった。
2イニングス目の7回には1死から4番のT・カサス内野手に二塁打を打たれたものの、続く5番のメジャー通算218本塁打のT・フレージャー内野手を153kmの高めの真っ直ぐで空振り三振。四球を挟んだ2死一、二塁からは7番のM・コロズバリー捕手を得意のフォークで空振り三振に抑えて2イニングで打者8人から5つの三振を奪う快投を見せた。